昨年7月発売のニンテンドー3DSのゲームソフト「妖怪ウォッチ」が、累計出荷本数100万本を超えるヒットとなった。コミック、アニメとのメディアミックスが奏功し、関連グッズも品切れが続出しているようだ。「妖怪ウォッチ」の魅力は、リアルとバーチャルをうまく連動させた点にあるといえる。関連グッズの妖怪メダルのQRコードをDSのカメラ機能で読み取るとゲーム中で使用できるアイテムになるなど、新しい遊びの仕掛けを提供。スマートフォンだ、ゲーム専用機だという枠を超え、コンテンツとしての魅力あってのヒットだと言える。
ゲームを楽しむ端末数はスマートフォンやタブレットが拡大し、ゲーム専用機の市場全体は厳しい状況だ。任天堂の2014年3月期連結決算でも3期連続の営業赤字となった。15年3月期では、収支のバランスを図る方針で、連結営業黒字に転換する会社計画だ。
このような中で、決算説明会ではゲームと連動するNFC(近距離無線通信)機能を埋め込んだフィギュア群を今後展開する予定と発表した。Wii Uや3DSと連動、ゲーム固有のデータを読み書き可能で、ユーザーがカスタマイズした任天堂キャラクターの育成が可能になる。この商品群は社内ではNFPという開発コード名で呼ばれている。「妖怪ウォッチ」同様、リアルとバーチャルを連動させる遊びの仕掛けを提供するだろう。
任天堂の岩田聡社長は、1月には任天堂が考える娯楽を「人々のQOL(生活の質)を楽しく向上させるもの」と再定義、QOL向上プラットフォームの構想を発表している。詳細は未定だが、「ゲーム人口拡大」だけではなく「健康人口の拡大」を目指すという。
厳しい市場環境の中でも、「妖怪ウォッチ」という人気作品が登場し、ゲームソフト市場は活気を取り戻しつつある。ハードではなく、ソフトが市場の様相を変えるのがゲーム市場の特性だ。任天堂は、以前からグラフィックなどで高性能を追い求めるソニーやマイクロソフトとは異なり、人間が本能的に面白い、楽しいと感じる部分を突き詰めることを基本姿勢として、様々な革新を起こしてきた。NFPとQOL向上プラットフォームで新しいゲーム市場を構築する可能性が高い。