任天堂の新型ゲーム機「Wii U」が発売された。発売2日間の売り上げは推計30万8570台(エンターブレイン調べ)。先行発売された米国では初週で40万台を売り上げている。同社は今期の販売計画として世界で550万台を掲げるが、この達成も十分視野に入る好調な出足といえよう。

2006年発売のWiiが世界的にヒットし、一時は時価総額で10兆円近くが視野に入ったこともあった任天堂。だが、11年に発売された携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」の不振などが響き、前期は上場以来初の赤字を記録した。

業績回復の起爆剤として期待が集まるWii Uだが、結論からいえば、Wiiほどの業績貢献をもたらすことは容易ではないだろう。理由は3つある。

1つは、コアユーザー以外のマスへの訴求力。Wiiがヒットした要因の1つに、「Wiiリモコン」「バランスWiiボード」といった周辺機器のイノベーションがある。直感的にゲームを楽しむための仕掛けをつくることによって、ユーザーの裾野を拡大してきた。だが、Wii Uには今のところ、さらなる拡大を予感させる材料が乏しい。Wii Uの特徴の1つに「Miiverse」と呼ばれるSNSを内蔵していることが挙げられるが、これもユーザーにどのようなインパクトを与えられるかは未知数だ。

2つ目は、外部環境の変化である。ハードを安価で販売し、質の高いソフトで利益を稼ぐ──。このビジネスモデルこそ、任天堂の強さの源泉であった。だが、スマートフォンなどでダウンロードして遊ぶモバイルゲームが近年、急速に浸透。エンターテインメント市場の細分化は加速している。当社では、16年に世界のモバイルゲーム市場が、家庭用ゲームソフト市場に追いつく規模に成長すると予想する。

3つ目は、競争環境の激化だ。モバイルゲームの普及により、DeNA、グリーを筆頭とした新規参入者が急増している。ユーザーの選択肢が広がっているため、コンテンツ提供者側には需要とのマッチングがより求められることになる。

任天堂が圧倒的なクオリティを持つ世界トップクラスのソフト会社であることは、今も揺るがない。だが、かつての利益水準を回復するには、もう少し時間がかかりそうだ。

(構成=プレジデント編集部)
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