ポケモン、脳トレ大ヒット連発
「任天堂のWiiというのは、つまるところ中身はゲームキューブなんですよ」(業界関係者)
前機種のゲームキューブの技術やシステムを転用していたから、Wiiは初期開発コストが低く済んだというのだ。
だから、新機種のハード機投入の際に最初からハードで利益を生むビジネスモデルだった。一般的に新しいゲーム機を投入する場合、まず普及を優先するために赤字覚悟で低価格で市場に出す。過去の任天堂自身の家庭用ゲーム機やライバル、ソニーのプレイステーション(PS)などがそうで、売った分だけ赤字が積み重なる。ただ、普及に応じて生産コストも下がり、ソフトも売れていき、分岐点を超えると黒字化するというビジネスモデル。任天堂のWiiはそれとはまったく違っていた。
しかも、2009年3月にWiiは全世界で5000万台の販売を突破するなど、爆発的なヒットを記録した。Wiiだけでなく、DSも同月に1億台を突破している。単品でこれだけ売れると、生産コストは劇的に下がっていく。さらに、競争相手のソニーが長らくもたついているため、通常なら本体の市場価格は何割か値下げされるのだが、高止まりしたまま。その相乗効果で任天堂は圧倒的な高利益を確保できているのだ。
任天堂の直近の売上高営業利益率は3割にも達する。社員数約4000人。ソニーのほぼ50分の1で、営業利益が3倍を誇る(08年9月期)秘訣はソフトづくりにもある。
もともと任天堂自身が日本一のソフトメーカーである。スーパーマリオ、ポケットモンスターなどでおなじみのソフトでミリオンヒットを連発しているだけでなく、DSでは「脳を鍛える大人のDSトレーニング」などの知能、教育ソフトという新しい分野でもヒットを飛ばしている。自分で開発したものだから、開発コストを吸収してしまえば、あとは売った分だけ利益になる。
自社ソフトの販売で高い利益を出しているだけでなく、サードパーティといわれる第三者のソフトメーカーに対しても利益を確保する仕組みを持つ。任天堂ソフトはソフトメーカーが開発したソフトを任天堂に持ち込み、任天堂が委託を受ける形で関連会社が全量を生産し、流通に乗せるというシステム。製造から販売までのほとんどを外部に委託するのだ(ファブレス)。
過去、粗製濫造でゲーム業界が大混乱したアタリショックの反省から、ソフトのクオリティを確保するのが本来的な目的だったが、その際、任天堂はソフトメーカーからロイヤルティや巨額の製造委託費を徴収することになる。
ロイヤルティそのものは115億円(08年3月期)と大きくはないが、この製造委託費(物流代行費も含むと思われる)は総額1700億円にものぼる。1本あたりDSのソフトで1700円、Wiiのソフトで1000円程度と推計される。DSは伝統的なカートリッジ方式だから、コスト面での比較はできないが、ディスク方式のWiiは、「ソニーのPS2向けソフトが原価300円でしたから、数十円程度の箱材代を含めても、任天堂は5割以上が利益になっているはず」(業界関係者)
すさまじい利益率。利が薄くてもソフトメーカーは任天堂向けにこぞってソフトを供給せざるをえないわけで、任天堂高収益の秘密はこんなところからもうかがえる。