同業他社よりも在庫削減が進展
急激な景気の悪化で積み上がった在庫を減らすため、企業各社はあらゆる手段を講じてその削減に取り組んでいる。単純に生産から販売を差し引いたものを在庫とすれば、これが増加すれば企業経営を圧迫させ、収益を押し下げる危険性がある。
独自の手法で在庫管理の徹底を図っているのが、国内建設機械最大手のコマツだ。2008年秋のリーマン・ショック以降、世界同時不況の進行とともに膨れ上がる在庫をどう削減してきたか、UBS証券株式調査部の星野英彦シニアアナリストは、同社の在庫をこう分析する。
「各国の独立系の販売代理店から船に積まれたものを含めて、コマツが全世界に抱える在庫は昨年12月末時点で2万4000台でした。これは想定する適正水準に比べ7割程度多い。工場の操業日数の短縮、代理店の在庫を自社管理に切り替えることで、今年3月末に1万7000台、6月末には1万4000台にする計画です。この1万4000台は適正な在庫水準で、同業他社に比べてハイペースで在庫削減を進めています」
ではなぜコマツは“在庫ゼロ”の運営を目指しているのか。
一般的には在庫を、本社の関連会社までと見なす企業が多いが、コマツは独立系の販売代理店の在庫まで管理する。建機は1台当たりの単価が高く、末端在庫まで把握しないと、需給変化に素早く対応できないからだ。
では、世界の販売会社の在庫状況はどうか。日本は、3月まで国内10工場のうち6工場で操業日を週2日に減らす減産に踏み切った。だが、中国が打ち出した4兆元の内需拡大策の影響で需要が持ち直し、エンジンなどの基幹部品を生産する栃木県・小山工場などはいち早く平常の操業に戻した。国内在庫は適正水準に近づいている。