ブランド維持の適正規模

 不況の深刻化で、総合スーパーをはじめ小売業の業績が冴えない。数少ない例外がアパレルのSPA(製造小売り)チェーンを展開するポイントだ。2009年2月期の業績は売上高867億円、経常利益159億円と10期連続の増収増益を果たした。あの「ユニクロ」のファーストリテイリングやしまむらと比較しても、売上高では一歩譲るが経常利益率(18.4%)では両社を上回る好調ぶりだ。

ユニクロより高収益……「ポイント」のブランド展開
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ユニクロより高収益……「ポイント」のブランド展開

もっとも、ポイントが展開する「ローリーズファーム」や「グローバルワーク」などのブランドは、さほど知名度が高くない。理由ははっきりしている。チェーンとしての適正規模を意識した「目立ちすぎない」出店戦略を徹底しているからだ。

福田三千男会長が振り返る。

「注力商品を男性向けカジュアルから女性向け『ファッションカジュアル』へ切り替えようとしていたころ、適正なチェーン規模はどれくらいかを検討しましてね。その結果、ひとつのブランドにつき『100店舗、売上高100億円』を目指すべきだと結論付けました」

ファッションカジュアルとは、百貨店ブランドとユニクロなどカジュアルチェーンとの中間価格帯の業態を指す。ポイントの調査では、従来型の百貨店ブランドは店舗数が100を超えるあたりで業績に減速感が出るという傾向が見られた。福田会長は「人口30万人につき1店強が限界で、それ以上店を増やすと、ファッションに敏感なお客さんが離れていくのではないか」という仮説を立てた。

しかし、同時期のアメリカにおける市場調査によると、現地のファッションカジュアルチェーンは「30万人に1店」を上回る密度の濃い出店をしているが、それでも高収益を確保しているという。どちらを信じればいいか。福田会長は「アメリカ人はショップが提案するコーディネートにはさほどこだわらず、複数のブランドの服を着合わせる傾向があるのに対し、日本のお客はより忠実な着こなしをする。そもそも日本人には他人と同じ服を着るのを嫌がる気質がある。そのためアメリカより密度の低い出店でも飽きられるのではないか」と考えたのだ。

ポイントが女性向けファッションカジュアルに舵を切ったのは1992年。その後、ローリーズファームの成功で急成長をとげ、02年には東証二部に株式を上場(現在は一部)。このとき、福田会長(当時社長)はアナリスト向け説明会で「100店、100億円のブランドを3つ育成する」と宣言した。

日本人は他人と同じ服を着たがらない

日本人は他人と同じ服を着たがらない

その言葉どおり、ポイントは100店舗前後でローリーズファームの出店にブレーキをかけ、グローバルワークなど別のブランドを育成することへ注力。売上高100億円を超える大型ブランドは「ジーナシス」を加え3つになった。店舗数は140~66と幅があるものの、一つのブランドを深追いしすぎて陳腐化するのを避ける、という基本戦略は変わっていない。もちろん魅力的な商品をそろえる開発力や、抜群の在庫回転率を支えるオペレーションの優秀さに負うところも大きいが、ブランドごとの「適正規模追求」を早くから意識してきたことも同社が高収益経営を続ける要諦だろう。

上場時の「公約」を果たしたいま、同社が課題とするのはコーポレートブランドの確立だ。第一歩として、東京・原宿に主力ブランド7つを集約した大型店「コレクトポイント」を4月下旬に開業する。

(坂本道浩=撮影)