※本稿は、尾形哲『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
内臓脂肪や皮下脂肪よりも先に落とせる“肝臓の脂肪”
40歳をすぎると、食べる量は変わっていないのに太る、食事制限をしてもなかなか痩せないと悩む方が増えてきます。二の腕やぽっこりしたお腹を見ては、蓄えられていく脂肪を疎ましく思う人もいるでしょう。
一口に脂肪と呼ばれますが、蓄えられる部位によって名称や特徴が異なります。二の腕のように皮膚の下にたまる脂肪が「皮下脂肪」、ぽっこりお腹は内臓の間や内臓そのものに付着する「内臓脂肪」です。本来は皮下脂肪と内臓脂肪に優先的に脂肪が蓄えられますが、ここだけで対処しきれなくなると増えるのが「肝臓脂肪」です。
肝臓脂肪は肝細胞の1つひとつにためられていきます。背脂入りのラーメンスープのような白い粒が細胞の中にあるようなものです。
過剰に蓄積されると「脂肪肝」になり、肝臓の炎症や肝硬変、肝臓がんに進行するリスクが高まります。だから、“肝臓に脂肪をためすぎてはいけない”のです。
ただ救いがあるのは、肝臓の脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪よりも先に落とすことができます。“いちばん落としやすいのが肝臓の脂肪”なのです。
体重の7%を減らせば脂肪肝から脱却できる
肝臓は食事でとった栄養の代謝、有害物質の解毒という働きを一手に担っています。代えがきかない重要な臓器であり、健康な肝臓であれば3分の2を切除しても元の大きさに戻ることができる驚異の再生力を誇ります。
肝臓は若さを維持できる臓器でもあります。私は脳死肝移植の手術で、80代の人の肝臓を50代の患者さんに移植したことがあります。健康な肝臓ならば、その後40年間にわたって働き続ける可能性が見込まれるからです。年齢を問わず、元気な肝臓を維持できるポテンシャルの高い臓器というわけです。体形は20代に戻れなくても、肝臓は20代に戻れるのです。
“再生力”も“若返り力”も備える肝臓なので、たとえ脂肪がたまっても、きちんと対策をとることで余計な脂肪を落とすことができます。しかも、薬ではなく、食事で脂肪肝は治せるのです。
ポイントは、食べ方を変えて“体重を減らすこと。今の体重の約7%を減少させると、脂肪肝が改善することが示されています(※)。現在の体重が60kgの人なら、60(kg)×7(%)=4.2(kg)を減らせば、脂肪肝は改善します。
※Promrat K., et al.(2010). Randomized controlled trial testing the effects of weight loss on nonalcoholic steatohepatitis. Hepatology. 51(1):121-9.