肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝は、お酒を飲む・飲まないにかかわらず、代謝異常によって生じる。肝臓外科医の尾形哲さんは、「代謝を正常化して脂肪肝から脱却するには、水の飲み方が最大のポイントになる」という――。

※本稿は、尾形哲『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

居酒屋でビールを飲みながら乾杯するイメージ
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「脂肪肝」は代謝異常による肝臓のSOS

飲酒習慣がある人は日頃から気にすることが多い「肝臓」。もちろん過度な飲酒が肝臓にダメージを与えるのは事実ですが、飲酒によらず肝臓に不具合が起きている人が増加しています。それが、肝臓に5%以上脂肪がたまる「脂肪肝」です。

現在、成人の3人に1人は「脂肪肝」だと推計されています。一般的に、糖尿病が予備軍を含めて成人の5人に1人といわれるので、脂肪肝がいかに多いかがおわかりいただけるでしょう。

“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は、病状がある程度進行するまで症状が出ないため、多くの人は自覚していません。健康診断の肝機能項目でアラートが出ていても、特段日常生活で困ることはないため、「病院に行くほどではない」とやり過ごしてしまうのです。しかし、脂肪肝を放置すると肝炎を起こして肝機能が大きく低下し、ひいては肝硬変や肝がんなどの大病につながることもあります。健康診断の血液検査項目にある“ALT値が30を超えていたら脂肪肝のサイン”。自己判断はしないで、かかりつけ医を受診してください。

「NAFLDからMASLDへ」脂肪肝の名前が変更

「脂肪肝」はこれまで長きにわたって、アルコールの多量摂取による「アルコール性脂肪肝」と、飲酒以外の食生活や習慣で引き起こされる「非アルコール性脂肪肝疾患 non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD」という病名で大別されてきました。さらに、NAFLDのうち肝炎に進行する病態を「非アルコール性脂肪性肝炎 non-alcoholic steatohepatitis:NASH」と診断してきました。

しかし2023年6月、アメリカ、ヨーロッパの学会では正確な把握が困難な飲酒量ではなく、“代謝異常による病態”である点を明確にするため、代謝を意味する「metabolic」という単語を用いた「MASLD(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease)」と「MASH(metabolic dysfunction associated steatohepatitis)」という名称に変更。

日本でもこの流れを受けて、2024年8月にそれぞれの新名称を「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」にすると発表しました。

MASLDやMASHの診断基準は学会による正式発表が待たれますが、脂肪肝があり、肥満、2型糖尿病、やせ、あるいは正常体重で2項目以上の代謝異常(高血圧、内臓脂肪蓄積、耐糖能異常、脂質異常)がある場合は、MASLDと診断される可能性があります。

肝硬変や肝がんに進行するMASHを見極めるためにも、早期発見と改善が大切です。参考までにMASLDと関係の深い「メタボリックシンドローム症候群」の診断基準を挙げておきます。メタボ診断で該当項目がある人は、脂肪肝の可能性も大。要注意です!