健康的に痩せるためにはどうすればいいのか。立教大学の杉浦克己特別専任教授は「ラクしてすぐにヤセられる薬やサプリは存在しない。そういった文言を謳う商品には注意した方がいい」という――。
※本稿は、杉浦克己『一般教養としてのサプリメント学』(草思社)の一部を再編集したものです。
最悪の場合、死に至る「ヤセ薬」とは
われわれを取り巻く情報の中には、ラクしてすぐにヤセられるというような興味を引くものが多いようです。効果が見られなくても安全であればまだいいのですが、実際に体重減少が見られるようなものは、海外品に多く、医薬品成分が含まれていることがあるので注意が必要です。
ダイエット食品による健康被害やデータ捏造の例は少なくありませんし、図表1の抗肥満薬の中で、フェンフルラミンやシブトラミンのような日本では承認されていない抗肥満薬が配合されているものは、副作用があります。しかし、インターネット通販を利用すれば、入手が可能です。
このようなものに手を出すと、健康被害を起こすだけでなく、場合によっては死に至ることもあります。
例えば、脂肪分解酵素のリパーゼを阻害し、摂取した脂肪の一部を吸収させないで排泄させる働きを持ったリパーゼインヒビター(商品名ゼニカル)のようなものは、筆者の知人でも使用した人がいますが、1日に10回以上トイレに行くことになるし、便意を我慢すると油のような便なので漏れるし、睡眠中も漏れるのでパジャマを何着も捨てたと言っていました。
ところが、同様の作用をもつ「アライ」(大正製薬)が腹部が太めの人用の要指導医薬品として2024年から薬局で発売されることになったので、太っていない人が乱用しないかが心配です。
また、ヤセるお茶とか、便がたくさん出て体重を減らすという商品もありますが、利尿作用や緩下作用(ゆるい下剤)のあるセンナなどの漢方薬が含まれているものもあり、トイレで暮らすほどにこもりきりになったり、脱水症状に陥る危険性もありますので、手を出さないようにしましょう。