衆院選で日本維新の会は44議席から6議席減らした。ノンフィクションライターの石戸諭さんは「大阪府内19の小選挙区で初めて全勝したが、比例の近畿ブロックでは前回選挙から100万票以上減った。第三極として注目を集めているが、足元はあやうい」という――。
日本維新の会の開票センターで、記者会見する馬場伸幸代表(右)と吉村洋文共同代表(大阪府知事)=2024年10月27日午後、大阪市北区
写真=時事通信フォト
日本維新の会の開票センターで、記者会見する馬場伸幸代表(右)と吉村洋文共同代表(大阪府知事)=2024年10月27日午後、大阪市北区

関西でも大敗していた日本維新の会

今回の選挙で飛び交っている疑問の一つに大阪における維新の強さがある。

日本維新の会は2024年衆院選で38議席と現有を6議席も減らしながら、大阪の19小選挙区をすべて制したからだ。「在阪メディアが維新寄りの報道をするから、大阪府民は支持するのだ」といった類いの極論は何度も目にしたが、この手の主張に直感以上の根拠はない。

私は大阪で社会部記者としてキャリアを積み、今も在阪メディアで仕事をしている。人間には敵対的メディア認知、つまりメディアが自分と反対の一派の主張ばかり取り上げていると感じ取るバイアスがある。もし、在阪メディアが極論を唱える人々の言う通りならば維新の退潮はないはずだ。

一つの現実を示しておけば維新は比例の近畿ブロックであっても2021年に獲得した約318万票、10議席獲得から、約207万票、7議席と大きく減らしている。強いはずの関西であっても100万票以上も票を逃したのは大敗としか言いようがない。

選挙結果を受けた大阪府知事の吉村洋文氏も「大阪以外は完敗の状態。非常に厳しい結果。立憲や国民は躍進する中、維新は野党の中では一人負け。与党が過半数割れ選挙の中で議席を減らして、厳しい結果だと思う」と語っているが、妥当なところだろう。

在阪メディアの報道は関西全域に及ぶ。維新が推した兵庫県知事をめぐる問題があったにせよ、もし効果があったのならば21年以降も2022年参院選、新型コロナ、万博と維新の露出はあっただけに大きく伸長しているはずだ。

とかく維新をめぐる話題は人々を熱狂させやすい。維新の議席を左右してきたのは見えにくいボリュームゾーンの存在だ。彼らの声は維新への賛否渦巻くSNS上でも現れることはなく、しかし議席を左右する。それは一体なにか。