石破政権が発足して、これからの政治はどう変わるのか。ノンフィクションライターの石戸諭さんは「長かった安倍時代に一区切りがついたことは大きい。これまで『安倍・反安倍』の構図で政治が語られてきたが、石破首相はそれにくみせず『退屈な政治』をしてほしい」という――。
衆院本会議で立憲民主党の野田佳彦代表の代表質問に対して答弁する石破茂首相=2024年10月7日午後、国会内
写真=時事通信フォト
衆院本会議で立憲民主党の野田佳彦代表の代表質問に対して答弁する石破茂首相=2024年10月7日午後、国会内

旧安倍派の「裏金議員」を非公認に

「擬似政権交代」による長かった安倍時代に一つの区切りが見えてきた。

これが石破茂政権発足時に真っ先に感じたことだった。発足直後の状況は芳しいものではなかった。通常は内閣発足直後に高い数字が出てくる支持率も各社ともに50%前後で、安倍政権、岸田政権に比べてもかなり低い数字が並んだ。

この数字が多少影響したのだろう。裏金議員の公認問題を巡って対応は錯綜した。

当初は比較的軽い条件を満たせば、全員が公認されるという見通しが報じられたが、これにはさすがに批判が殺到した。そこで石破首相が打ち出したのは、「①『選挙における非公認』より重い処分を受けた者、②非公認より軽い処分でも、処分が継続し、国会の政治倫理審査会に出席して説明していない者、③処分を受け、地元での理解が十分に進んでいないなどと判断される者――」という条件だったと報じられた

日経新聞によると、こうした方針転換を積極的に打ち出したのは小泉進次郎選対委員長だったという。方針をそのまま適用すると非公認となる現職はまず萩生田光一元政調会長、下村博文元文科大臣、新型コロナ禍で対応にあたった西村康稔氏ら旧安倍派の要職歴任者が軒並み非公認となる。

これ自体は理解ができる結論だろう。法的な処分とは別に、選挙を控えて政治的な対応を取りうること自体は不思議なことではない。裏金議員の選挙区に公認候補を送り込まず、選挙で信任を得るように求めたところは世論を踏まえたうえで引ける一線だ。非公認の対象となったのが結果的に安倍派中心となったこともまた時代の変化を感じさせる。

石破政権はかつての民主党政権と同じように、直前まで良いことを言って高い期待を振りまいたわりに、いざ任せてみると残念なことしかない政権になってしまうかもしれないし、その可能性は高いと思っていたが、権力闘争に打って出たということなのだろう。これが吉と出るか凶と出るかは、選挙の結果が出るまで判断はできない。

立憲は立憲で、発表した経済政策(特に物価安定目標0%超)に整合性がないと批判が集まっている。ひとまず政権は始まったばかりである。

本稿では石破内閣発足で起きるかもしれないポジティブな可能性を探ってみたい。