失職を選んだ兵庫県の斎藤元彦知事は、出直し知事選へ出馬することを決断した理由のひとつに、「高校生から手紙をもらったこと」を挙げた。ジャーナリストの小林一哉さんは「『高校生からの手紙』は、自分が『いじめられ役』であることを示す使い勝手のいいアイテムだ。あの有名な知事経験者も、かつて会見で『高校生からの手紙』を披露したことがある」という――。
逆境に負けない「鋼のメンタル」
兵庫県議会9月定例会初日の9月19日に全会一致で不信任決議が可決された斎藤元彦知事(46)は、30日午前0時に失職した。
失職後50日以内に行うと規定されている知事選は「10月31日告示、11月17日投開票」に決まった。その出直しの知事選に、いち早く斎藤氏は出馬表明した。
斎藤氏はメディアからの批判や厳しい世論にさらされたものの、県議会全員一致の不信任決議にも動じることなく、再び県政運営へ強い意欲を見せた。
この出馬表明で、逆境に負けない「鋼のメンタル」の持ち主であることを有権者に示すことになった。
出直しの知事選に向けて斎藤氏の選挙戦略を見れば、したたかな政治手法の持ち主であることがわかる。選挙戦を勝ち抜くためにしっかりと布石を打っているのだ。
兵庫県議会は「反斎藤」の強烈な姿勢を見せてきたが、それだけでは出直し知事選で斎藤氏に勝つことはできないだろう。
いったい、どういうことなのか見ていく。
なぜ「県議会解散」を選ばなかったのか
まず、斎藤氏が「失職」を選択して、県議会解散を見送ったことはあまりにも不可解だった。
県議会すべての会派、無所属の議員86人すべてが知事不信任決議案に賛成した。つまり、県議全員が一致して、斎藤氏に「知事失格」の烙印を押したことになる。
パワハラ、おねだりなどのさまざまな「疑惑」が浮上した斎藤氏だが、何らかの決定的な犯罪行為をおかしたわけではない。
疑惑を告発した文書を巡る一連の対応について、斎藤氏は知事としての正当性を主張して、すべて適切だったと繰り返した。
つまり、県議会の対応にこそ問題があり、県政混乱の責任は知事ではなく、県議会にあると考えていた。
その主張の筋を通すならば、斎藤氏は「県議会解散」を選んでいたはずだ。
ところが、「最初から県議会解散は選択肢になかった」ととぼけ、「失職」を選んだ。