兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑を相次いで報じられている。8月30日に行われた百条委員会で、斎藤知事は「県民のため」と繰り返し、辞職を改めて否定した。ジャーナリストの小林一哉さんは「マスコミは職員へのパワハラ疑惑をセンセーショナルに報じているが、問題が生じた背景をもっと冷静に考えたほうがいい」という――。
斎藤知事が繰り返した「県民のため」
職員に対するパワハラ疑惑に揺れる兵庫県の斎藤元彦知事(46)は8月30日の県議会百条委員会で、一連の疑惑を「必要な範囲の指導であり、合理的な指摘だった」などと否定した。
さらに告発者の処分は「適切だった」と従来と同じ認識を示した。
2時間半に及ぶ30日の百条委員会を傍聴してわかったことは、「維新の会」を除く県議会の主要各派は、斎藤知事がパワハラ等の疑惑を自ら認めた上で、自主的に辞職するよう求めているということだ。
それに対して、斎藤知事はあくまでも「闘う」姿勢を崩さなかった。
県民への強い責任感で職務に当たるとする斎藤知事は、ときには職員たちへの厳しい物言いや深夜のチャットメッセージを行うことで、今回のパワハラ疑惑につながったと釈明した。
反省の弁を繰り返しながらも、斎藤知事は「大事なのは県民のために何の仕事ができるかだ」を何度も強調した。
ただ斎藤知事がそこまで無理をして、県民のために、いったい何に取り組んでいるのか見えてこなかった。
それが、今回の百条委員会の終盤になって、「ひょうご県民連合」(立憲民主党系)の上野英一県議が、ことし2月県議会での斎藤知事とのやり取りを明らかにしたことで、ようやく腑に落ちた。
「県民のため」を錦の御旗に知事の座にしがみつく
2月県議会の議事録を確認すると、県議の多くが、斎藤知事へ不満や疑問を突きつけていた。
それででも、やはり「県民のために」を掲げる斎藤知事の姿勢を変えることはできなかった。
そんな中で、職員たちの不満を代表する声ともいえる元西播磨県民局長(60)の告発文書が“爆弾”となって炸裂した。
「一死を持って抗議する」などと元局長がメッセージを残して亡くなったことで、斎藤知事に辞職を求める圧力が強まった。
それでも、「県民のために」を錦の御旗に斎藤知事は何とか辞職圧力を跳ね返している。
斎藤知事は「県民のため」に何をしようとしているのか。