小泉進次郎氏につきまとう「批判」
9月27日に投開票される自由民主党の総裁選挙に、小泉進次郎元環境相が立候補する見通しとなった。岸田文雄首相の突然の不出馬表明を受け、いち早く立候補を表明した小林鷹之前経済安全保障担当相につづくとみられる。進次郎氏や小林氏の他にも、多くの立候補者が出る見込みで、実質的に次の首相を選ぶレースが本格化する。
その進次郎氏をめぐっては、2009年の初当選時から常に「学歴ロンダリング」との批判がつきまとう。
進次郎氏は、1981年4月14日、小泉純一郎氏の次男として神奈川県横須賀市に生まれ、1988年に関東学院六浦小学校に入学以来、大学まで関東学院で過ごした。元首相である父・純一郎氏は、1942年1月8日生まれで、神奈川県立横須賀高校卒業後、1962年4月に慶應義塾大学経済学部に入学している。
純一郎氏の父・純也氏は日本大学法学部の夜間を卒業しており、その舅にあたる小泉又次郎氏は横須賀学校(横須賀小学校の前身)である(※1)。小泉家は又次郎から進次郎に至るまで4代続く政治家一家であるものの、「学歴」という点では、いわゆる「高学歴」とは言いがたい。
それでも、進次郎氏の「学歴」が注目されるのはなぜか。彼が、「学歴ロンダリング」をした、と言われるからである。進次郎氏は、関東学院大学経済学部を2004年に卒業したのち、米国コロンビア大学大学院に進み、2006年5月に修士号を得ている。
関東学院大→米コロンビア大院は「ロンダリング」なのか
関東学院大学経済学部の大学入試偏差値は「高い」わけではないし、さらに、内部からの進学となれば、進次郎氏の「学歴」というか「学力」に高評価を与えるのは、難しい。それなのに、「世界大学ランキング」で17位のコロンビア大学の、それも大学院を2年弱で修めたとなれば、どうだろう(東京大学は29位)。
「自身の出身大学よりも偏差値の高い大学院に進学して高い学歴を得よう(※2)」としたのではないか。そう言われても、仕方がないのかもしれない。
ここで考えたいのは、日本社会の「学歴」へのこだわりようである。「学歴なんか意味がない」、という立場も、逆に、「学歴こそが大事だ」との見方も、どちらも「学歴」を気にしている点で共通している。
おそらく世間では「進次郎は関東学院大卒の低学歴」と思っている人が多いのだろう。だからこそ「ロンダリング」という言葉が使われてしまう。
しかし、進次郎氏は「高学歴」である。なぜなら、グローバル・スタンダードと言わずとも、日本でも最終学歴、つまり、出身学部よりも修了した大学院で「学歴」を見るのが常識だからである。それは企業の採用活動でも、研究者の世界でも同様だ。それなのに、なぜ世間と「認識の齟齬」が生まれてしまうのか。背景には、大卒が増えたことによって、どこの大学からどの大学院に行くのか、に注目する人が増えたという流れが挙げられよう。
その背景を見る前に、進次郎氏個人について確かめておこう。
参考文献
※1:大下英治『小泉純一郎・進次郎秘録』(イースト・プレス)
※2:『プレジデント』(2020年4月17日号)