がん患者は、心身ともに大きなストレスに晒される。起業家の高山知朗さんは、2011~2024年の間に脳腫瘍、悪性リンパ腫、急性骨髄性白血病、大腸がん、そして肺がんと5度がんを発症した。どうやって闘病生活を乗り越えたのか。著書『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』(幻冬舎)より、人生観の変化について紹介する――。
日常が突然、崩れ去る「がん告知」
「がん」という病名を告げられたその瞬間、誰もが大きなショックを受けます。
日本人の2人に1人ががんになるとか、がんは治る病気になってきているという知識は、告知のショックの前ではあまり意味をなしません。これまでずっと遠くにあると思っていた「死」が、突然目の前に現れ、「自分はもうすぐ死ぬのかもしれない」という恐怖に頭の中が支配されるのです。
私はこの経験をしたことで、病気を乗り越えた今でも、いざというときに備えて心のどこかで準備をしているようなところがあります。人生いつ何が起こるか分からない、と。
別に再発の恐怖に怯えて毎日びくびくしながら暮らしているというわけではありません。それでも何かの折に、がん告知の場面を思い出すことがあります。当たり前の日常が突然崩れ落ちるあの瞬間が脳内に蘇ります。
そうすると、「目の前の日常は、決して当たり前ではないんだ。さまざまな巡り合わせの結果、奇跡的に与えられた、かけがえのない一日なんだ」ということを改めて思い出します。そして「今日も悔いのないように生きよう」と思うのです。
おかげで、がんになる前よりも、毎日を幸福に生きられるようになったと感じています。