ファミコン登場から20年余り。ゲームがより高度に、より複雑に進化する一方、ファンは減り始める。ヒントはここにあった。キーワードは「非連続」である。
販売は100万台超、プレステ3の倍以上
テレビの前で棒状のワイヤレスコントローラーを振り回しながらテニスや野球のゲームを楽しむ。任天堂の新型機「Wii(ウィー)」の快進撃が止まらない。
昨年12月に発売されると年末までに国内販売累計台数は99万台を記録。ソニー・コンピュータエンタテインメントが一カ月早く発売した「プレイステーション3」の47万台を大きく引き離した(いずれもゲーム専門誌ファミ通調べ)。その後も店頭では品薄状態が続く。携帯機「ニンテンドーDS」シリーズも好調で、任天堂は2007年3月期連結決算で売上高、利益ともに過去最高を見込む。
Wiiの最大の特徴は家族ぐるみで楽しめる世界を打ち出し、従来ノンゲーマーとされてきたシニア層や女性客を広く取り込んだことだ。非連続的なヒットを生み出す任天堂流の創造的思考を探る。
【POINT:1】 競合市場(レッドオーシャン)を脱し
新市場(ブルーオーシャン)に目を向ける
任天堂躍進のドラマは2002年、半世紀にわたり社長を務めたカリスマ、山内溥氏がその2年前にソフト開発会社ハル研究所から招いた岩田聡氏を後継に指名するという“非連続な人事”に始まる。岩田氏はある変化を感じていたという。
岩田「どえらいタイミングで社長になってしまったな。それが正直な気持ちでした。私は83年にファミコンが登場して以来、最前線でゲーム開発に携わってきて、数年前から何か変だぞと感じていました。昔はゲームをよくやったけれど最近は時間がなくてやっていないという声をよく聞くようになったのです。