現代自動車を筆頭とする韓国勢に猛追されている日本の自動車メーカー。だが、2013年は日本勢にとって逆襲の始まりの年となりそうだ。

近年、韓国勢が躍進した主な理由は、迅速な意思決定と徹底したマーケティング志向にある。オーナー経営者によるトップダウンのもと、日本を含めた世界中からエンジニアやデザイナーをヘッドハントし、急成長を遂げた。また、プロダクト志向の強い日本勢に対し、韓国勢はマーケットインの発想を貫き、各国でシェアを伸ばしてきた。

一方、最先端の技術力では依然、日本勢に分がある。例えば、ハイブリッド車の技術ではトヨタ自動車、ホンダが世界で群を抜いている。ガソリン直噴エンジンやディーゼルエンジンの技術も、欧米からは周回遅れだが、デンソーなど優秀な部品メーカーとの協業やドイツメーカーとのアライアンスにより今後キャッチアップが期待される。

もう1つ、日本勢のほうが優れている点が現場力だ。代表例はトヨタの「カイゼン」。工場勤務の従業員たちが自ら、創意工夫を行う──こうした姿勢は日本ならではの強みと言えよう。頻繁にストライキが起こり、経営と現場が対立する韓国勢とは対照的である。

さらに日本勢は、この1~2年の間、韓国勢の強みを吸収しようとしてきた。トヨタが昨年4月に発表した「TNGA(Toyota New Global Architecture)」には、攻めの姿勢が顕著に表れている。

TNGAとは、商品力を向上させると同時に原価低減を進める取り組み。中でも注目すべきはデザイン体制の強化である。これまでのトヨタ車のデザインは、安心感はあるものの、とびぬけた特徴のないものが中心だった。しかし、今後は車両デザインを検討する人数を絞り込むことにより、意思決定を早め、斬新な車づくりを目指す。

今年は、こうした取り組みの成果が結実し始めるだろう。外部環境も追い風となる。12~13年は日本車のフルモデルチェンジのサイクルの年に当たる。一方、韓国勢は昨年までに新車を発表し尽くし、14年まで次のフルモデルチェンジを待たなければならない。増産体制が整うのも同時期だ。また、安倍政権の誕生で円安基調がしばらく続くと予想されているが、これも短期的には大きなボーナスとなろう。

(構成=プレジデント編集部)
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