平野敦士カール
東京大学卒。日本興業銀行(現みずほ銀行・みずほコーポレート銀行)を経て、NTTドコモでおサイフケータイ普及の立役者として活躍。2007年、戦略コンサル会社・ネットストラテジー創業。著書『プラットフォーム戦略』がベストセラーに。
プラットフォーム戦略とは、関係する企業やグループを「場=プラットフォーム」にのせることで、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する経営戦略です。
日本における代表例は、インターネット・ショッピングモールの「楽天市場」でしょう。ご存じのように、楽天自体がモノを売っているわけではなく、「楽天市場」という場に、モノを売りたい小売店をたくさん集めている(図参照)。
商品の魅力で外部ネットワーク効果(いわゆるクチコミ)を誘発し、その集客力を武器に、さらに出店数を増やす。そして集客した会員を粗利益の高い自社ビジネスにつなげる――こうした流れをつくったことが、楽天の強みといえます。
私がNTTドコモ時代に担当した「おサイフケータイ」も、消費者と店舗を携帯電話でつなぐプラットフォーム戦略のひとつです。このサービスによって、通信会社であるドコモは、日本で10指に入るクレジットカード会社になりました。
「楽天市場」も「おサイフケータイ」もITの進化で可能になったビジネスモデルですが、百貨店や築地市場など、プラットフォームの原型は古くから存在しました。
身近な例では、合コンがあげられます。
魅力的なメンバーを集めて出会いの場を提供し、参加者に付加価値を与えるという合コンの機能は、プラットフォームにほかならないのです。
場の主宰者を「プラットフォーマー」と呼びますが、これも合コンの幹事をイメージするとわかりやすい。
じつは合コンでいちばん得をするのは幹事なのです。時間や場所、誰を誘うかも自由に決められるし、参加者全員の連絡先といった情報も入手できる。
ビジネスでも同様で、たとえばコンビニというプラットフォームの主宰者であるローソンやセブン-イレブンには、「売れ筋の商品は何か?」という最先端のマーケティング情報が集まります。それを利益率の高い自社のプライベートブランド開発に利用することもできるのです。
重要なのは、情報も人も金も、プラットフォーマーに集まるということ。そのことをアメリカの企業はずいぶん前から気づいていたのでしょう。マイクロソフトしかり、グーグルしかり、アマゾンしかり……。複数の企業とグローバルなアライアンス(連携・提携)を組むことで、各々の企業の人脈や知恵、ノウハウ、顧客などを次々にとり込んで、巨大なビジネスを構築していったのです。