1人のビジネスマンが勝つためにできること

プラットフォーム戦略で後れをとっている日本ですが、まだ巻き返しのチャンスはあると思います。

平野敦士カール氏

重要なのは、はじめからグローバル市場を視野に入れて戦略を練ること。日本の技術の「ガラパゴス化」が批判の的になっていますが、要は世界標準になれなかったということ。グローバルなプラットフォーマーを狙おうとする戦略が欠けていたのです。

もちろん世界標準をとることは容易ではありません。「なぜ日本式を採用しなきゃいけないんだ」という諸外国の反発も予想される。そこで提案したいのが、最初から欧米や中国とアライアンスを組むこと。中国の場合、十数億人のマーケットがあるのでコストも下げやすい。当初は「お願いします」と頭を下げて、のちに日本が主導権を握ることも不可能ではないと思います。

私見ですが、グローバルに勝負できる日本の強みといえば、マンガなどのコンテンツと、神戸牛のようなブランドのある食材ではないでしょうか。食材として神戸牛を売るだけではありません。育て方や食べ方、レストランも含めて、パッケージとして世界に輸出する。たとえば神戸牛の国際的な認定制度をつくって、フランス料理のように、ひとつの文化としてプラットフォーム化するのです。意外かもしれませんが、可能性はあると思います。

また、経営面でも課題があります。多国籍企業と渡り合って、プラットフォーム戦略を成功させるためには、結局のところ、トップダウンの意思決定が不可欠です。現場の意見を吸い上げて、リスクを承知のうえで決断できるのは、経営トップだけ。大企業の経営者にも、ベンチャー的な発想が求められるといえるでしょう。先にもふれたように、組織や人事制度など、経営戦略の大胆な見直しも必要です。

個々のビジネスパーソンも、発想を変える必要がある。多様なアライアンス先との交渉に備えて、社外人脈を広げておくことはその第一歩です。

手軽な方法として、異業種の人とランチをとることをお勧めします。さまざまな業界の内情を知ることができるし、情報交換もできる。「ビジネス仲人」を買って出るのもいいでしょう。AさんとBさんをランチに誘って“お見合い”をさせるのです。

ビジネスの交渉でも、社外人脈を広げるときも、気をつけてほしいのは、まず相手が何を求めているかを聞き出すこと。そして自分ができる最大限のものを提供する。そのためにも、日頃から自分のスキルや強みを磨いておくことが大切だと思います。

※すべて雑誌掲載当時

(ビジネス・ブレークスルー大学教授 平野敦士カール 構成=梶山寿子 撮影=澁谷高晴)
【関連記事】
なぜ日本からS・ジョブズが生まれないのか
初音ミクに世界中のファンがつく理由
『ストーリーとしての競争戦略』
難しい人に「イエス」と言わせる説得術
S・ジョブズは「消費者イノベーター」の先駆である