なぜこのゲームはここまで人気になったのだろうか。原点に戻って、このゲームの中身について考えてみたい。コンテンツ的には、アクションとロールプレーイングゲーム(以下、RPG)を組み合わせたゲームである。ユーザーは、ドロップと呼ばれるパズルブロックを4秒間自分で好きなように動かせるのだが、その間に落下してくるドロップを全体を俯瞰してどのように動かせばより多くのコンボにつなげられるのか考えねばならない。その意味で反射神経を要するアクションゲームの側面をもつ。

またRPGの側面は、ダンジョンの中を探検していくプロセスと、モンスターを収集、育成、合成、追加していくところにある。このゲームのサービス開始時には、約200体のモンスターしか用意されていなかったが、今ではその数を約1300にまで増やしている。現在は、ほぼ月に50体というハイペースで追加を行っており、それが2年以上も続いているのだ。

筆者は常々、ビジネスの長期化のために「チェンジャブル」というコンセプトが重要だと説いている。ディズニーランドが長期的な隆盛を誇っているのは、マンネリに陥らないよう常に新規のアトラクションやイベントを加えているからだ。森下社長も、会社創設時に一番のモデルにしたのがディズニーランドだったという。ディズニーランドではアトラクションはもとより、クリスマスやイースターなどのイベントも逐次装いを変え、リピーターを離さない。このような取り組みが参考になり、パズドラでもモンスターの追加を頻繁に行っているのだ。

ところでセオリー的には、製品開発の際に、その前提としてニーズの把握が不可欠である。同社では、このメガヒットを生み出す際に、どのようなマーケティング・リサーチを行ったのだろうか。その結果は驚くことに、「何もしないですね」(森下氏)とのことだった。それでは「勘なのですか」と不躾な質問をしたところ「勘です」と即答してくれた。

ただし、「勘」といっても、単なる思いつきの類いではない。すべては社長の原体験に基づいているのだ。例えば子供の頃、大きなカブトムシを捕まえると、「こんなでかいカブトムシをどこで捕まえたんだ?」と、友達から好奇の目を向けられる。その情景を思い浮かべると、モンスターがどんどん成長するように組み立てたら面白いと思いつく。森下氏によると、夢で見たこと、映画で見たり娯楽で経験したことなどのすべてが原体験になり、そこからオリジナリティが出てくるという。