「敗軍の将」ヒルマン監督の息子との時間

蛇足だが、敗軍の将、トレイ・ヒルマンについてもふれておきたい。

「子どもが多感な時期で、父親の責任をはたしたい」

ヒルマンが監督退任を表明したのは、シーズン中の9月8日。その後、ロイヤルズの監督に就任することが明らかになり、日本シリーズ直前に入団会見を行ったことで、日ハムの選手から批判が相次いだ。

中日に1勝4敗で敗れた原因は、和の乱れと指摘されたが、わたしは彼に同情を禁じ得ない。前回に詳述したように、12年間もマイナーの指導者を務め、さんざん苦労を重ねてきただけに、日本で実績を残し、メジャーから白羽の矢が立ったことが、うれしくてしかたなかったのである。

2008年春、松井秀喜の取材でヤンキースタジアムを訪れると、キャッチボールをしている父子がいた。目を凝らすと、父親はヒルマン、子供は痩せっぽちの中学生ぐらいの男の子。2人は汗だくになりながら、楽しそうにキャッチボールをつづけていた。

ベンチに戻った際、ヒルマンに、「あなたの息子ですか」と尋ねると、「そうだ」と、満面笑みで答えた。

メジャー監督と、息子との時間。ヒルマンは長年望んでいた2つのものを手に入れたのである。この年、ロイヤルズは、アメリカンリーグ中地区の4位になり、5年ぶりに最下位を脱出した。

落合博満監督 レギュラーシーズン通算成績】
 1150試合 629勝491敗30引き分け 勝率5割6分2厘

(文中敬称略)※毎週日曜更新。次回、藤田元司監督

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