膨らんでいた左手親指の付け根
中日のプレーイングマネジャー(選手兼任監督)に就任した谷繁元信(42)に会ったのは、秋季キャンプ真っ盛りの2013年11月中旬。かねてより、取材した際に確かめたかったのは、左手の秘密だった。担当記者から、左手が右手より大きく、掌を広げると、親指の付け根、いわゆる「金星丘」が膨らんでいると聞いていたからである。
ナゴヤ球場に隣接した選手寮「昇竜館」で会い、そのことを真っ先に尋ねると、谷繁はニヤリとし、両方の掌を広げた。
「左のほうが大きく、膨らみも、厚みもちがうでしょ。4年前かな、打撃練習で使う手袋が左だけきつくなったので、メーカーの担当者に文句を言ったら、掌を見て左右の大きさがちがうと指摘され、初めて気づいたんです」
谷繁の通算出場試合数2900は、野村克也(南海ほか)に次ぎ、プロ野球歴代第2位。1試合平均の捕球数を150球とするなら、43万5000球も受けた計算になる。
「マスクをかぶらなかった試合もありますから、それを差し引くと、ざっと40万球ぐらいでしょうか。シーズンだけでそれだけですから、キャンプ、オープン戦、試合の前後、オールスター、ポストシーズンなど、もろもろを加えると、倍の80万球。計算すると、とんでもない数字ですよね(笑)」
左手の膨らみは、捕手として、何物にも代えがたい“勲章”といっていいのである。