監督に必要な5つの力と2つの心
興味深いことに、谷繁は理想とする監督を「すべてを兼ね備えた監督」と表現し、7つのキーワードをあげた。「見る力、読む力、決断力、我慢する力、コミュニケーション力、優しい心、鬼の心。この7つを兼ね備えていれば、監督として完璧です(笑)。いまは秋季キャンプですから、見る力。シーズンに入って大切なのは、読む力と決断力。シーズン途中には、我慢する力が求められる。コミュニケーション力は、年中必要。些細なひと言で、選手は楽になったり、吹っ切れたりする。25年やっている自分でも、孤独を感じるときがありますから」
谷繁は13年の5月6日に2000本安打を達成したが、プロ25年目での達成は史上最も遅い記録。42歳というのも、史上最年長記録である。谷繁の人生は、まさに“カメ”の歩みといっていい。
「瞬間、瞬間に何が必要かを考え、必死にやってきた。その積み重ねが今日をもたらした。人生を振り返り、はっきりいえるのは、1度も流れに逆らわなかったこと。高校進学も、第1志望の広島の学校に行けず、島根に行ったことで、甲子園に出場し、運が開けた。今回のプレーイングマネジャーも、自分がそうなりたくてなったわけじゃない。気がついたら、そうなっていただけ(笑)。流れに逆らわず生きてきたことが、運を呼んだのかもしれませんね……」
(文中敬称略)
(日刊スポーツ 山口典利=写真)