孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 5000万円で独占契約のチャンス

23歳の孫正義は、1981年に日本ソフトバンク(現ソフトバンク)を設立した。その後、ゲーム会社の草分け的存在であるハドソンに独占契約を申し込む。すると条件として、5000万円の前払いを提示された。ソフトバンクの資本金はわずか1000万円。契約を締結するなら資金集めに無理をする必要があるが、その後は安定した売り上げが見込める。契約しないなら、商品の仕入れ先や販売先をゼロから開拓するために、今後地道な努力が必要となる。
 【A】契約する【B】契約しない(正答率60%)

孫正義氏

30年前、日本ソフトバンクが誕生したばかりの頃のことです。会社の資本金は、わずか1000万円。僕の手元には資金が潤沢にありませんでした。しかも、まだ売り上げと呼べる業績もあげていない。もちろん世間的な知名度などゼロに等しい状況です。

吹けば飛ぶような弱小会社だったにもかかわらず、僕たちはパソコンソフト卸会社として、ある著名なゲームメーカーに堂々と独占販売権を申し込みました。

「大量に売ってみせます。僕たちが目指すのは世界一のソフト流通業。豆腐を数えるように1丁2丁(1兆2兆)を扱える会社になりたいんです」

申し込んだメーカーは、ゲーム会社の草分け的存在「ハドソン」です。73年に創業した同社は、当時すでにマイコンソフトゲームメーカーとしてヒット商品をいくつも手がけ、全国に独自の流通・販売網を築いていました。

マイコン業界もまだ草創期で、競合がほとんど存在しない。順風満帆だったところへのこのこ出かけていったのが、僕たちだったというわけです。ヤブから棒な、まさに身の程知らずの僕の申し出に対して、幸いなことに先方のトップは耳を傾けてくれました。「大ボラ吹きは、大きなビジョンを持っていることの裏返し」。そう理解し、僕の志に共鳴してくれたのかもしれません。ただし、販売権を与えるには、一つの課題をクリアするのが絶対条件だと。

「1週間後に、現金で5000万円持ってきたら独占販売権を与えましょう」