2013年11月、ホテルオークラで執り行われた「お別れの会」には約2500人が参列した。故人はソフトバンク元取締役の笠井和彦。最初に弔辞を読んだのは孫正義だった。孫は約16分間、ときおり涙で声を詰まらせながら、遺影に語りかけた。我々にとって「仕事」とは何なのか。笠井の生き様は、それを問いかけてくる。

笠井さん、さみしいです。本当にさみしいです。私の隣に座っておられる奥様の気持ちを思うと胸が苦しいです。

笠井さんが亡くなる、ほんの少し前、会社に出てこられて、笠井さんが、「うちの会社、まだまだいきますから。世界に向かって大きく羽ばたいていきますから」って。そうやってお客様におっしゃっておられたの、本当に昨日のようです。

この4年間、笠井さんが闘病生活を続けられて、「まあ僕のはがんじゃないですから、これはがんもどきです。カルチノイドという、何かわけのわかんない名前ですけど、大丈夫ですから心配しないでください」というふうにおっしゃっておられました。そんな笠井さんも、僕に対する気遣いかと思いますけども、平気だと言っておられて。ただ、笠井さんの顔が、だんだんとお腹にたまった腹水の影響で腫れてくる。もう笠井さんの顔を見るのがつらくて。そんな中でも笠井さんが、「もう大丈夫ですから」って言ってくれましたね。本当につらいです。

今でも僕の心の中で、笠井さんがずっとずっと元気に励ましてくれて、「いきましょうよ」「もっともっといきましょう」と言ってくださっているのを、胸の中で感じております。