やっとわれわれが赤字から脱却し、これからさらに進んでいこうというときに、笠井さんと相談しましたね。やっぱりこれから、インターネットはパソコンからケータイに移っていく。インターネットがわれわれの本業ですが、これをやっていくためにはパソコンのインターネットだけではだめなんだ。どうしてもモバイルにいかなきゃいけない、と。そう私が相談すると、「同感です、いきましょう」といって、一緒に腹をくくってくれました。

そして、そのためにはわが社にはブランドが必要だ。プロ野球の球団を買いたいんだ、ということを相談したら、笠井さんは「わかりました」と答えてくださいました。普通であれば、やっと赤字から脱却したばかりのわれわれに、そんな思いを描くというのは、分不相応だったと思います。でも、笠井さんは、「いきましょう」と言ってくれました。そしてホークスを買収し、われわれの傘下に収めることができました。

いよいよそのあと、携帯電話事業への参入を目指しました。そこで、自力でゼロからつくるのか、それともボーダフォンジャパンを買収すべきか。私としては当時、いろいろな銀行にだいぶ心配をかけているし、ここで大きな借金を背負うというのは、万が一のときにまずいかもしれないな、ということで、50%ぐらいをソフトバンクが持って、残りの50%ぐらいはいくつかの会社に持ってもらいましょうか、そのほうがリスクが小さくていいですよね、と相談しました。

笠井さんは、「いや、どうせいくなら私は50%は反対です。私は100%でいくべきだと思いますよ」。僕と笠井さんの関係について、世の中の人は、僕がイケイケドンドンで、笠井さんがそれを一生懸命に止めている、経営を保守的に見ていただいてるというイメージが強いと思います。でも僕だって思い悩むことがあります。怯むことがあります。いざというときに、ここぞというときに、笠井さんは、「いきましょう」と。「資金調達は大丈夫ですかね」と相談すると、笠井さんは、「任してください。私が何とかしますよ」って言ってくださいましたね。