孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 不振の合弁事業解消。運営責任はどうシェアするか
1991年、孫は外国企業とのジョイントベンチャーを積極的に展開していた。だが、必ずしも成功を収めず、撤退を迫られる。そんなとき、利益も損失も相手と出資額に応じて負担するか。それともこちらの運営に責任があると考え、出資比率に関係なく損失分を100%かぶるか。【A】赤字は契約通り応分負担【B】赤字はすべて自社負担(正答率30%)
ある会社に声をかけて、パートナーシップを組むことになったとします。出資比率は半分ずつでジョイントベンチャーを始めたが、業績が上向かない。仕方がない、撤退しようとなったとき、その損失の負担や出資金の戻しは50:50でいくのか、それとも損失分はこちらが負うべきか。
大半の人は「株式会社の原則」に基づき、出資が半分ずつなら、損失も半分ずつと考えるでしょう。僕も基本的にはそれに賛成します。でも、僕には契約条項にそんな内容は盛り込まれていないにもかかわらず、こちらが100%損失をかぶった経験があります。
91年の春。ソフトバンクは、米国大手のシステムインテグレーション企業、ペロー・システムズ社とジョイントベンチャーをつくりました。僕と会長のロス・ペローさん(のちに大統領選出馬)が意気投合して、50:50の比率で立ち上げたものです。
「突然変異が進化を生む」
これは大学時代からの僕の持論です。他の種族と交わることが突然変異の要因になり、自己進化を促すのです。
主な事業内容は、汎用コンピュータからパソコンまでのネットワークシステムの設計・教育・コンサルティング。先方からは、システム技術者や経営コンサルタントなどを招き情報システム構築のノウハウを教えてもらいました。
一定の成果はありましたが、残念ながら事業は失敗。「こちらに運営の実質的な責任がある」と感じた僕は、応分ではなくこちらが損失を100%吸収し、資本金まで買い取りました。かかった費用は10億~20億円。当時はまだ上場前で、会社に余裕の資金などなかった。だから、損失のほとんどを個人で背負ったのです。