ペローさんは「そこまでしなくていいよ。50:50が当たり前だよ」と言ってくれましたが、それではプライドが許さなかったのです。ペローさんとの信頼関係も壊したくなかったし、言ってみれば僕は「義」を重視した。「損(孫)しても正義」です。
信義のある人間でないと同志的結合はできません。能力はある、金はある、でも「どこかあいつは信用できない」では、多くの信頼は得られない。そう言われるのを期待していたわけではないけれど、ペローさんは僕に「次から何かジョイベンの提案があったら、もう契約交渉なしでおまえと組む」と言ってくれました。
「うまくいかなくても、やったことは全部将来の自分にプラスになる」
僕はそう信じています。
小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶氏が解説
責任感の強さがよく表れた事例だ。ビジネスにおいて一番重要なことは、損得以前に信用であることを知っていたのだろう。信用があれば失敗をしていろいろなものを失っても立ち直れる。もちろん自分の懐具合を把握したうえのことであり、数字のセンスがあるからこそ実行できる。
さらに、相手を見る目があった点も特筆すべき。のちに大統領選に出馬するほどの人物だったからこそ、信頼関係を築いておきたいと考えたはずだ。
●正解【B】――損してでも相手との信頼関係を築くことを優先
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。
(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 小倉和徳=撮影)