孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 苦労して買収したが、興味が薄れてしまった

1994年、ソフトバンクは株式を店頭公開し、その資金を基にM&Aを活発化させた。当時のソフトバンクの時価総額を大きく上回る額をつぎ込み、アメリカの大手コンピュータ関連出版社、世界最大のコンピュータ関連見本市を主催する会社などを相次いで買収する。ところが、買収がうまくいかず、その後他の事業に関心が移ってしまう。A案は無理して買った事業だからとあきらめず、立て直しに注力する。B案は、もっと魅力的な事業のために、損切り覚悟で売却する。
【A】当面は買収事業に集中【B】売却して次なる関心へ(正答率10%)
孫正義氏

M&Aは「その後」が大変なのです。

あるブランド価値の高い企業を何千億円もかけて買収に成功したとします。ところが、無理して買ったツケが出て財務は火の車。このような危機的状況に陥ったとき、経営者はそれを克服することに集中するべきか。いっそのこと売却先を探して、財政の健全化を図るべきでしょうか。

一般論ではなかなか判断しづらいのですが、僕が選択したのはBの「売却」でした。

94年7月、ソフトバンクは株式を店頭公開しました。初値は、公募価格1万1000円に対して1万8900円です。

大きな軍資金を手にして、1年後、アメリカのジフ・デービスとコムデックスという著名な会社を、計3000億円かけて立て続けに買収することに成功しました。

「地に足のついたことだけをやっていても、革命にならない」

時価総額2000億の会社が3000億の企業を買収したのもこの信念ゆえです。自分でいうのもなんですが、常に身の丈を超えた行為をするというのがソフトバンクのパターン。これがその先駆けだったかもしれません。