孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 創業半年の赤字企業に「いける」直感
1995年、マイクロソフトのウィンドウズ95が発売され、いよいよインターネットの時代が本格的に幕を開けた。当時のヤフーは、創業半年で実績はなし。社員がたった十数人で先行きも不透明。さらに月額2000万円もの赤字を垂れ流す状態だった。A案は、100回に1回の可能性を信じて大勝負。B案は、何らかの実績を数字で上げられるまで、しばらく様子を見守る。【A】出資する【B】実績を上げるまで出資しない(正答率50%)
創業半年で、社員はわずか16人。しかも、赤字が出ている。皆さんはそういう会社に100億円を投資しますか。セオリーで言えば、NOでしょう。到底、投資はできません。投資するかと聞かれれば、僕もまず首をタテにはふらないでしょう。
しかし、100回のうち1回は、YESという可能性が残されています。99回は投資しない、で決まりですが、会社の将来性次第では投資を決断するかもしれません。では、「100回に1回」の価値があるのはどんな会社でしょうか。注目すべきは、赤字の中身でしょう。先行きはさらに悪くなりそうな赤字か、今は赤字でも途中で反転して業績上向きを見込めるのか。いい赤字か悪い赤字か。もし、確率1%の、いい赤字の会社なら、他の役員が全員反対でも、それを押し切って投資すべきケースがある、と僕は思います。
アメリカの「ヤフー」がまさにその典型的な事例でした。売り上げは月に約1000万円あるものの赤字も約2000万円。検索サービスという新しい分野を切り開いた新興の会社のひとつ。ワン・オブ・ゼムです。
ところが、95年末にソフトバンクは100億円を出資して、ヤフー株式の35%を取得しました。これはつまり、創業半年の実績ゼロの企業の価値を300億円と見積もった計算になります。それから約2カ月後の年明けのこと。ヤフー40%、ソフトバンク60%の比率で、今ではすっかりおなじみになった「ヤフージャパン」をジョイントベンチャーで設立した。その後、ヤフーのイギリスとフランスとドイツ、これらも傘下の会社を通じてジョイベンで立ち上げたのです。