組織にも仕事にもベストはない

<strong>ヤフー社長 井上雅博</strong>●1957年、東京都生まれ。79年東京理科大学理学部卒。同年ソード電算機システム(後に東芝が買収)に入社。ソフトバンク総合研究所、ソフトバンクを経て、96年1月、ヤフーを設立。同年7月より現職。
ヤフー社長 井上雅博
1957年、東京都生まれ。79年東京理科大学理学部卒。同年ソード電算機システム(後に東芝が買収)に入社。ソフトバンク総合研究所、ソフトバンクを経て、96年1月、ヤフーを設立。同年7月より現職。

2009年の4月1日付で、ヤフーは大幅な組織変更を行いました。社内の仕組みの縦と横をガラッとひっくり返したような変更です。事業部のなかの企画部門を営業部隊と一つにまとめ、他方、事業部ごとにバラバラにあったエンジニア組織を全社で一つにまとめました。

売り上げ責任の一本化など明確な狙いがあっての組織変更なのですが、僕はそもそも組織は5年も続いたら意味があろうがなかろうが変えたほうがいいという考えを持っています。だから、また5年ぐらい経ったら、今とは全然別のことを言いだしているかもしれません。

変えることにより何かが生まれます。実際、エンジニアの開発組織を統合したことで重複の無駄が見えるようになってきました。僕は組織にベストというものはないと思っていますし、仕事のやり方にもベストはないと考えています。一つのやり方をずっと続けるのではなく、とにかく変えてみること。それに伴って改善の余地も生まれてきますし、人が変われば違う目で見ることもできます。

創業から13年。ヤフーはこれまではインターネット市場の拡大に乗って成長してきました。次の10年もそれでいけるかと考えると、インターネットの利用者数はすでに5000万人超。今後、市場が倍になることは期待薄です。そこで2007年、新成長戦略を打ち出したのです。

新しい事業プランを考えるのは、僕を含めヤフーの人間にとっては日常の仕事です。だから、これまでは社員に対しても取り立てて発想のための仕組みはつくってきませんでしたが、人数も増えたところで少し体系的に取り組もうと、昨年末に「登龍門」という名の制度をスタートさせました。全社員が応募できる事業プラン・コンテストです。2週間程度の短い募集期間だったのですが、合計888件の応募があり、一次選考、最終選考の結果、何件かの事業化を決めました。