流行サイトは自分で使ってみる

僕自身の情報収集の仕方、発想の源としては、とくに決めている手法やスタイルはありません。新聞はそれなりに読みますし、ウェブはたっぷり見ます。

最近読んだ本といえば、今年は春の連休が長かったので、何かまとめて読もうとエルキュール・ポアロのシリーズを30冊ほど読みました。僕は大学の数学科出身でパソコンが普及する前からコンピュータ言語を使ったプログラミングなどに凝っていたのですが、もともとは文学青少年。SF小説も好きです。推理小説やSFは、いろいろ想像しながら読める点が何より楽しめます。

情報のインプットで、やはり一番多いのはインターネットの利用ですね。新しいサイトで流行っているものがあれば、自分で必ず使ってみます。一ユーザーとして実際に利用してみるのです。インターネットのサービスは、実際に使ってみないと、どこに面白さや価値があるのかわからないからです。

僕はよく次のように言っています。

「インターネットというのは、絶対、利用者に強制はできない。強制せずに大勢の人に使ってもらうには、そのサービスをよりよくするしかない。そのためには、そのサービスの何が面白くて、どこが便利なのか、人々は何を楽しんでいるのか正しく理解することが不可欠だ」

だから僕は、アメリカでこのサイトが流行っている、韓国では大勢の人がこれを使い始めている……と聞けば、必ず自分で利用してみます。「多分たいしたことないだろう」などと先入観は持ちません。流行っていること自体、必ず何か理由があるはず。それが何なのか。問題なのは、自分が理解できるかどうかです。もし、どうしても面白さがわからなかったら、ほかの人に尋ねてみます。

実際に試してみることでしか理解できないことがあるということを、僕はインターネットを通じて学んでいます。

前述の新しい成長戦略の1つに「オープン化」があります。これを打ち出したのは、ある日、数字を見て愕然としたことがキッカケでした。

ヤフーのサービスのリーチ(インターネットユーザーのうち月に一度以上ヤフーを使う人の割合)は90%近くあります。サービス数は百何十個もあり、ページビューもダントツに多い。ところが、利用時間で見るとヤフーは20%弱しかないのです。

そこで僕はどう考えたかといえば、「頑張ってヤフーの利用時間を50~60%に増やそう」ではありません。インターネットの価値は、いろいろなものがグシャグシャと多様にある点にあります。そういう面白さが増せば増すほど、インターネット全体の価値はアップし、人々の利用時間は増えるでしょう。パイが大きくなれば、たとえ比率は20%弱のままでも、量のほうは増えます。

そこで、(利用者を自社のサイトに囲い込む従来の自前型ではなく)、他社のサイト等とも連携する「オープン化」が必要だと考えたわけです。オープン化では、一つにはヤフーの持っている技術を提供します。新しいサイトを立ち上げるパートナー企業が広告システムや課金システムづくりに余計なコストをかけないで済むように、その部分はヤフーのものを自由に使ってもらう。そのぶん、パートナーがコンテンツのほうに多く予算を割ければ、内容が充実して価値がより高まるでしょう。