インターネットに情熱を向けたかった
ジフ・デービスはコンピュータ関連出版の最大手で、全米の出版業界でも五本の指に入る規模を誇っていました。グループ全体の雑誌出版数は130誌以上にのぼります。また、展示会部門も主力事業で、情報ネットワーク技術関連の展示会では世界一のスケールでした。僕はこの展示会部門も買収しました。
一方、コムデックスは世界最大のコンピュータ関連見本市(展示会)を主催している会社です。この展示会から得られる最新情報を流通や出版事業にも生かしていく予定でした。
しかし、そう簡単に計画通りにことが進むはずもなかったということでしょうか。巨額の出費で財務は大ピンチに陥ります。
ここで僕の前に提示された選択肢は2つでした。一つは、立て直しに時間と労力を集中すること。もう一つは、始まったばかりのインターネット事業に集中すること。
僕の場合は、買収後、「頭の中の99%はインターネット」という状態にがらりと変わっていました。もちろん、ジフもコムデックスも衝動買いしたわけではありません。相手のトップを口説くための綿密な下準備に、どれほど時間を割いたことか。
しかし大型買収して2年ほどたつと、僕の頭の中に占めるジフとコムデックスの割合は、わずか1%になってしまっていた。興味を失ったわけではありません。すさまじい勢いで状況が変わるインターネット業界に合わせ、ほぼすべての情熱をそちらに向けることになったからです。いや、向けたかったのです。
結局、2000年にジフもコムデックスも、買った値段より安く売却することになりました。
同じように損切りしたのは、やはりその頃に買収したメモリ増設ボードの最大手キングストン・テクノロジー(96年買収、99年売却)です。構造的な赤字が継続する中で、こちらも買収してから3年後に、創設者側へ売却せざるをえませんでした。