小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶氏が解説
この決断には、孫さんの2つの大きな特徴が垣間見える。一つは将来の見通しをきれいに描くことができ、戦略を立てるのが上手であること。ハドソンに目をつけ、5000万円というハードルを越えれば突破口が開けると、緻密な計算を立てている。もう一つはダウンサイドリスク(失敗したときに被る最大限の損失)をきちんと読めていること。この状況下でも5000万円は責任が取れる範囲内と読んでいたはずだ。
また、1週間で5000万円もの現金を用意できたのは、それまで人間関係においてきちんとした信頼関係を築いてきた、つまり人を裏切らずに生きてきた証左でもある。
私はコンサルタントとして、経営者の方に「今から1~2時間でいくら集められますか?」と質問することがある。それまでどういう生き方をしてきたかがわかるからだ。
孫さんは勝負をかけるところはかける「戦略の人」というだけでなく、人を動かすだけの熱意を持つ「信念の人」であり、責任感の強い、信用を重んじる人だとわかるエピソードだ。
●正解【A】――厳しい条件をクリアすれば相手の信頼を得られるから
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。
(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 小倉和徳、本田 匡、相澤 正=撮影)