孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 会社が上り調子の時期に肝炎の診断
1983年、ソフト卸売業と出版事業が好調で、売上高は45億円となっていた。創業時は3人だった社員も125人に拡大。しかしその矢先、死亡リスクの高い重病に襲われる。そこで選択。完治のためと割り切り、入院治療に専念するか、病を押して仕事に取り組むか。
【A】療養に専念し、早期復帰【B】病を押して、経営に専念(正答率65%)
創業間もない1983年、僕は突然の病に倒れました。病名は、慢性肝炎。それも肝臓がんへと進行する可能性の高い肝硬変寸前の状態でした。20代にして「5年はもつかもしれないが……」と診断されたのです。
療養に専念するか、経営に専念するか。正解は一つではないでしょう。僕のとった行動は、Aに近く、Bとのミックスでした。決断そのものはかなり早かったのを覚えています。主治医に宣告されてすぐ、「翌日入院します」と伝えました。実際、体も鉛のように重く、しんどかったのです。
ただ、ずっと入院したままでは会社も倒れてしまうかもしれない。3日に1回は病院を抜け出し、意思決定が必要な役員会議などには出席していました。社員には病気のことは内緒にし、長期出張が続くと説明しました。
出社日以外は治療を最優先したとはいえ、闘病生活は楽ではなかった。正直に言うと、入院当初の夜、病院の個室でひとりメソメソと泣きました。「会社も始動したばかり、子供もまだ幼いのに、俺もこれで終わりか」と。感情が抑えられませんでした。