4億人──。日本発のスマートフォンアプリを使うユーザー数だ。今や台湾、タイ、インドネシア、スペインなど、世界に広がっている。支持されたきっかけは、文字では伝わりにくい様々な感情をイラスト化したスタンプにある。日本を代表するITサービスへ成長したLINEは、いかに誕生したのか。

会議なし、仕様書もなし

森川亮氏

【田原】資料を読んでいておもしろいと思ったのは、森川さんの経営の考え方です。経営は野球ではなくサッカーだとおっしゃる。野球とサッカーは、どこが違うんですか。

【森川】野球は、すごく計画的ですよね。まず打順が決まっていて、自分が何番目に打つのかわかります。ポジションも決まっていて、ピッチャーがキャッチャーをやったりもしません。そのようにフォーマットとかプロセスがきっちり決まっているのは、大企業的な文化だと思います。一方、サッカーは状況に応じてパスするのもシュートするのも自由。場合によってゴールキーパーがシュートを打ってもいい。僕たちのように変化が速い会社は、野球よりサッカーのやり方が合っています。

【田原】あと驚いたのは会議をしないこと。これは本当ですか。会議しないと、何も決まらないでしょう?

【森川】なるべく減らしています。何かを決めるのは、べつにメールとかLINE上でもできるので。いわゆる定例会議はなるべくなくしています。

【田原】仕様書もつくらないそうですね。それで仕事ができるんですか。

【森川】インターネットのビジネスが成熟してくると、人は機能よりデザインや気持ちよさでサービスを選ぶようになるという確信を持っています。なので、アイデアが出たら仕様書をつくるのではなく、まずデザイナーに絵を描いてもらいます。それをいじりながら、「これ、いいよね」とか「こうしたら使いやすいよね」となったところで、初めてエンジニアのほうに渡すというやり方をしています。