転ぶ映像の裏で、中国の工場で起きていること
では、中国のヒューマノイドは、工場で実際に何をしているのか。
中国のシャオミは3月、自社の電気自動車工場で、ヒューマノイドが部品にナットを取り付ける工程を、3時間連続で自律的にこなしたと発表した。両側に同時に取り付ける作業の成功率は90.2%で、生産ラインが求める最速の、76秒ごとの作業の速さに合わせたという。限られた工程での、企業による発表である。それでも、競技場で転んだロボットと同じ国のロボットが、自動車工場の流れ作業の速さについていき始めている。
一方で、限界もはっきりしている。ロイター通信は8月下旬、広西チワン族自治区・柳州の訓練拠点などを取材し、中国のヒューマノイドの現状を伝えた。拠点の職員によれば、簡単な作業でも、速さや作業量は人の約2割にとどまるという。中国の研究者は、物や照明、角度、設備が学習したときと少し違うだけで失敗しやすいと指摘する。同じ記事は、特定の作業のために造られた従来型の産業ロボットのほうが、工場ではいまはまだ安く、確実だとも伝えている。
出荷の約95%は中国製という事実
しかし、この記事には、別の重要な数字も並んでいた。バンク・オブ・アメリカの調査部門によれば、昨年世界で出荷された約2万台のヒューマノイドのうち、約95%が中国メーカー製だった。さらにロイターが1000件近い公共入札を調べたところ、中国の中央・地方政府は2026年上半期だけで、少なくとも2億3000万ドルをヒューマノイドと関連機器の購入に投じていた。1年前の同じ時期の約3.7倍である。取材先では人の約2割の作業効率にとどまっていても、台数と予算はすでに動き出している。
その投資は、ロボットを「教える場所」にも向かっている。柳州の訓練拠点では、100体を超えるヒューマノイドが並び、動作を教え込まれている。この施設向けの機体と関連機器は、ロボットメーカーのUBテックが、地元政府から1800万ドル規模で受注した。記事によれば、一つの使える動作をロボットに覚えさせるのに、初心者の訓練担当者なら約300回の試行を要する。熟練した担当者なら、使える動作を教えるまでの試行回数が、初心者の約6分の1で済むという。教える人の熟練も、ロボットの実用化を左右するのである。
注目すべきなのは、現場に何台入れたかに加え、そこで何を学び、次の機体や制御にどう反映しているかである。熟練者の動作を教え、失敗や人の介入を記録し、改善した動きを検証する。この積み重ねを継続できる企業が、実用化までの距離を縮めていく。
完成しているから警戒するのではない。未完成のものを現場へ出し、学び、改良する循環を、いち早く回し始めているから、競争相手として見る必要がある。転倒の映像と、工場での作業の実績は、それぞれ別の能力を示す証拠なのである。

