老後を穏やかにすごすためには、何を心がければいいのか。医師で作家の久坂部羊さんは「老いに抵抗するより、現状を肯定するほうが楽に生きられる。できるだけ長く自分の足で歩きたいなどと欲の深いことを考えていると、効きもしないサプリメントや苦しいトレーニングで、お金と時間を無駄にしてしまう」という――。(第1回)

※本稿は、久坂部羊『欲張らない死に方 賢く老いるヒント』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

寝ている人の手
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運動を続けても、いつかは歩けなくなる

欲望に振りまわされず生きる近道として“現状肯定のすすめ”がある。ああしたい、こうしたいと思わずに、現状を肯定する。

高齢者の場合は、年をとったらこんなものと考えて、さまざまな老化現象や不具合を受け入れる。そうするとイライラが減り、楽な気分になれる。

いつまでも若々しくありたいとか、まだまだ自分は元気だとか、若い者には負けんなどと言って、自然な老いに抵抗していると、苦労し、苛立ち、歯がゆくなったり、情けなくなったりして、不愉快な時間が増える。

運動をしなければすぐに歩けなくなるなどと言う人もいるが、運動を続けていればいつまでも歩けるわけでもなく、いつかは歩けなくなる日が来るし、運動はやりすぎるとかえって関節が痛くなったり、脛骨(下腿の骨)や踵骨(かかとの骨)の疲労骨折を起こしたりして、早々に歩けなくなる。

先のことを考えるより、今、歩けていることを喜び、その幸運に感謝して、いずれ歩けなくなることに今から心の準備をしておくほうがいい。

できるだけ長く自分の足で歩きたいなどと、欲の深いことを考えていると、効きもしないサプリメントを買ってお金を無駄にしたり、苦しいトレーニングやリハビリで時間を無駄にしたりする。