「混合診療の原則禁止」という前提がある
まず「医療版ファストパス」について分析するにあたっては、現行の保険診療における「混合診療の原則禁止」について理解を深めておく必要があります。
「混合診療の原則禁止」とは、一連の医療行為のなかで保険診療部分と自費診療部分を同時におこなってはならないという「原則」ですが、これは法律の条文で規定されているものではありません。
健康保険法第86条第1項は、保険診療と自費診療の併用を認める場合を、評価療養・患者申出療養・選定療養の3類型にかぎって列挙しています。
この3類型以外の自費診療を混ぜると、その療養全体が保険給付の対象とならず、保険で賄われるはずの部分まで全額自己負担になってしまうのです。
つまり混合診療の「原則禁止」とは、この「限定」を超えた併用は認められないとするものです。
たとえば、「かぜ」の診療に来た患者さんを診察し、症状を緩和する薬剤を投与(保険診療部分)したうえで、栄養ドリンクなどをあわせて販売(自費診療部分)することは禁じられます。もし栄養ドリンクの購入もさせるなら、初診料、薬剤料といった保険診療部分も、全額自費になるのです。
ファストパスは“例外”の枠に入る
ではその例外となる、評価療養・患者申出療養・選定療養とはどういったものでしょうか。
以下簡単に例示します。
「評価療養」は、将来の保険適用を見すえて有効性と安全性を評価する段階にある治療(いわゆる先進医療)を指します。
「患者申出療養」は、治験などでは受けられない未承認の治療を、患者の申し出を起点に国が評価する仕組みです。
そして「選定療養」は、保険適用を前提とせず、患者が自らの選択で受ける療養で、差額ベッド代や紹介状なしの大病院受診時の定額負担が代表例です。いずれも保険診療部分はふだんどおり給付され、患者の負担は併用部分の上乗せ分だけとなります。
今回の「ファストパス」は、3類型のうち選定療養の「予約に基づく診察」として、保険医療機関が予約料を徴収できる制度の枠内にあります。
じつはこの「予約に基づく診察」の要件は厳格です。
たとえば予約時刻から30分以上待たせた場合は予約料を徴収できず、予約料を取らない時間を外来診療時間の2割程度確保すること、予約患者の診療は10分程度以上確保するよう努めること、医師1人あたり1日概ね40人まで、などの決まりがあります。

