「なぜ病院の待ち時間は長いのか」
人気の飲食店でもテーマパークでも、人が集中する施設では順番待ちの行列はあたりまえ。お出かけ前には、並ぶ覚悟でいる人がほとんどではないでしょうか。
順番待ちといえば、医療機関も待ち時間が長い施設の代表格として有名です。皮膚科や耳鼻科、整形外科といった専門外来はとくに待ち時間が長いイメージを持つ人も少なくないと思いますが、例年にくらべてインフルエンザの流行が早く始まってしまった今年は、一般的な内科診療所でも冬場のような混み具合が早くも始まっています。
待ちたくない、並びたくない、という気持ちは誰しも同じ。とくに医療機関は体調が悪いときに利用する施設ですから、誰よりも早く診察室にたどり着きたいと思う人も少なくないでしょう。
最近ではネット予約できる医療機関も出てきましたから、以前よりも院内で待つストレスがなくなったという声も聞こえてきそうですが、「予約していたのに待たされた」という経験を持つ人もいるかもしれません。
そうしたなか、9月中旬に投稿された「病院に来るたびに思うけど、なぜこんなに平気で人を待たせるんだろう。ネットで時間予約していても、そこから何十分も待つ……」との言葉で始まる、医療機関での待ち時間にかんするポストに、医療関係者から「医療だから仕方がない」などといった批判の声があつまり、大きな波紋が広がりました。
「500円で優先診療」院に寄せられた賛否の声
ポスト主は、これらの批判の声に応える形で「できない理由ではなく、少しでも改善する方法を考えるべきだ」という問題提起をおこない、これにたいして医療者からの対策として、追加料金を支払う予約診療=「医療版ファストパス」を設ける案が提示されました。
すると、それと期をほぼ同じくして、外食産業から医療機関へと広がるファストパスを取り上げたテレビ報道も注目を浴び、議論は「医療版ファストパス」の是非に発展していくことになったのです。
当該テレビ報道では、500円のファストパス料金で予約診療枠内を優先する診療所(急患は最優先)が取り上げられ、診療所理事長の「普通だと30分前後、院内にとどまらなければならないが、診察時間が5分なら7〜8分の滞在で済む」「患者さんの終わる時間が読めない、という不満に応える一つのツール」との説明が流されました。
「医療版ファストパス」に賛成する声には、
「患者は時間節約、病院はクレーム減」
「500円という法外ではない値段は、逆に公平性を担保している」
といったものがある一方で、反対する声には
「金ある人だけ助かる」
「経済格差がそのまま健康格差になりうるのではないか」
といった懸念が多く示されました。
こうした議論を俯瞰していると、賛否の両者に少しずつ事実誤認があって、そのことが議論をわかりにくくしていると考えられました。
そこで本稿では、この「医療版ファストパス」について、現行の医療保険制度をふまえて解説しつつ、今後の方向性と懸念される問題点等につき論じてみたいと思います。

