騒々しいベルから「癒やし」へ

そもそも、ご当地駅メロはどのように生まれたのか。

かつて駅のホームでは、「ジリジリジリ……」とけたたましい発車ベルが一日中鳴り続けていた。騒々しいとの批判を受け、JR東はピアノやハープ、川のせせらぎなどを取り入れた「癒やし系」の音色を開発。1989年3月、新宿駅と渋谷駅で発車メロディーを導入した。

2000年代に入ると、駅への愛着や地域活性化につなげる取り組みとして、その土地にゆかりのある曲が使われるようになった。

例えば、JR山手線の高田馬場駅では、漫画家の手塚治虫が付近に事務所を構えていたことから「鉄腕アトム」のテーマ曲を採用。京浜東北線の蒲田駅(東京都大田区)では、映画「蒲田行進曲」のメロディーが流れる。

ホームに響く数秒の旋律には、その街の記憶や物語が込められていた。では、なぜ今、姿を消しているのか。

ワンマン化で変わる鳴らし方

最大の要因が、運転士だけで列車を運行する「ワンマン化」だ。JR東は次のように説明する。

「ワンマン運転を計画している線区では、多くの場合、ワンマン運転実施のタイミングで鳴動方法(操作方法)を変更しています」

近年、JR東は、首都圏を走る列車のワンマン化を進めている。

従来は、駅に列車が到着すると車掌がホームへ降り、ボタンを押して発車メロディーを流していた。ワンマン運転では車掌が乗務しないため、この方法を続けられない。

そこで、運転士が運転台のモニターを操作し、車両に取り付けた車外スピーカーからメロディーを流す方式へ切り替えた。車両側で駅ごとに異なる曲を使い分ける仕組みにはなっていないため、線区共通のメロディーが使われる。横浜線、根岸線、南武線では、いずれもワンマン化のタイミングでご当地駅メロの使用が終わった。