職人技を捨て、作業を「数字」に落とし込む

池田社長はそば職人の仕事を徹底的にマニュアル化し、誰もが同じ味を出せる仕組み作りに着手した。

「そばの世界は歴史が古く、昔ながらの職人は『返し1杯に対してダシ5杯』といった具合に、一升マスや寸胴に刺した竹の棒を目安に作っていました。しかし、それではアルバイトには教えられません。すべての工程を『何グラム』『何リットル』『何度』という具体的な数字に落とし込みました。また、みりんを一升瓶で買うと割れる危険があるため、メーカーに交渉して20リットル入りの業務用パックを作ってもらうなど、現場の負担を減らす工夫も重ねました」

そば粉の配合も同様だ。店舗に重い粉の袋を置いて職人がその都度量るのではなく、あらかじめ工場に「そば粉55%の割合でミックスし、女性のアルバイトでも持ち運べるように8キロや10キロの袋に分けて納品してほしい」と発注するようにした。

こうして各店舗の味のブレをなくし、営業を続けながら不都合を一つずつ改善していった。納得のいくマニュアルが完成するまでには、創業から約5年もの歳月がかかったという。

「早い・安い」よりも「うまい」が第一

徹底的なマニュアル化を進める一方で、池田社長はそばの「おいしさ」には一切妥協しなかった。

「立ち食いソバは『早い・安い』が最優先される栄養補給の場ですが、うちは『うまい』が第一の“町のそば店”です。都心部の立ち食い店はスピード重視のため、麺を『茹で置き』し、天ぷらも『揚げ置き』します。しかし、うちは注文を受けてからかき揚げを油に入れ、それを見てからそばを釜に入れます」

おいしさの秘訣は、自家製麺と「茹でたて・揚げたて」の徹底にある。麺を茹で置きする場合、伸びないようにそば粉の比率を3割以下に落とす必要があるという。しかし、ゆで太郎のそば粉の比率は55%と高いため、わずか1分40秒でサッと茹で上がるのだ。

こうすることによって、そば粉の香りも楽しめる本格的な日本そばが楽しめるという。