※本稿は、安保雅博『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)の一部を再編集したものです。
最初の老化が「肩」に表れる理由
突然ですが、ひとつ質問です。20代の頃と70代では、筋肉の量はどれくらい減っていると思いますか? 厚生労働省の健康情報サイト「生活習慣病などの情報(旧e-ヘルスネット)」によると、全身の骨格筋量は、20代を100とした場合、70代では70まで低下します。つまり、約3割の筋肉が失われているのです。
筋肉は、年齢とともにまんべんなく減るわけではありません。特に減りやすいのは、「歩く」「立つ」「姿勢を保つ」ための筋肉です。これは、特別な病気がある人の話ではありません。ごく普通に年を重ねただけで誰にでも起こる変化です。
厄介なのは、こうした変化のほとんどに「自覚症状がない」ということです。
「大きな痛みはない」
「ゆっくりでも歩けている」
「日常生活も何とかこなせている」
そのため、多くの人が「まだ大丈夫」「年のわりには元気」などと思いながら、気づかないうちに老化を進めてしまいます。
そして、その“最初の変化”が表れやすい場所――それが肩なのです。
頭の重さは「米1袋分」
肩から始まる老いは、次のような流れで全身へ波及していきます。
①体全体の筋力(特に背中の筋肉)が衰え、肩の関節可動域が狭くなってくる
②肩が前に倒れ、首~頭が前に出る
③背中が丸まり、重心が後ろに傾く
④骨盤が後ろに傾き、ひざや股関節に負担がかかる
⑤重心バランスが崩れて不安定になり、転びやすくなる
「肩が少し前に出るくらいで、そんなに影響があるの?」と思われるかもしれません。しかし転倒の多くは、こうした小さな姿勢の崩れの積み重ねによって起こります。
なぜ老いは、「肩が前に倒れ、首~頭が前に出る」という形から始まるのでしょうか。理由はとても単純で、「人の頭はとても重い」からです。頭の重さは、体重の約8%。体重60kgの人なら、約5kgに相当します。5kgというと、よく売られているお米の袋と同じ重さです。
それだけ重たいものを支えているのですから、体にかかる負荷は相当に大きいということが想像できるのではないでしょうか。頭の重さは年を取ってもほとんど変わりません。しかし、重たい頭を支える背中の筋肉は、年齢と共にどんどん弱っていきます。その結果、背筋は頭を支えきれなくなり、首~頭が前に出てしまうのです。