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3月決算企業の株主総会シーズンがピークを迎える6月。いまや個別株を保有する個人投資家は珍しくないが、総会に行くとなると少し気が引ける。しかし、約25年にわたって優待投資を続け、年30〜40社の総会に足を運ぶ「優待ブロガー」のまる子さんは、株主総会を「推し活のライブみたいなもの」と表現する。生活者目線で見た、株主総会の楽しみ方とは。

投資を始めたきっかけは「吉野家」だった

現在の保有銘柄は200〜250社。年間30〜40社の総会に通うというまる子さんが繰り返し口にするのが、「株式投資は推し活と同じ」というフレーズだ。

「私は推しの会社を見つけて、応援するような気持ちで投資をしています。そういう意味では、配当や優待はある意味でおまけのようなもの。年に一度のライブに行く感覚で総会に出かけて、登壇する社長を見て『この人、推せるな』なんて思いながら楽しんでいます。投資って、推せば推すほど楽しめるものだと思います」

そんなまる子さんが「優待投資」の世界に足を踏み入れたのは2000年ごろ。きっかけは、当時住んでいた自宅近くにあった吉野家だった。

「『株主優待やってます』という告知が出ていて、株主になると吉野家での飲食で使える金券がもらえると知りました。それで、株式投資するとこんなお得な仕組みがあるんだ、と興味を持ったんです。ちょうどネット証券が出始めて手数料が下がり、単元も小さくなって、個人投資家が増え始めた頃でした」と振り返る。

吉野家から始まり、まる子さんはさまざまな優待銘柄を買うようになった。初めて参加した株主総会は日本トイザらス(現在は上場廃止)。日本マクドナルドの創業者であり、当時はトイザらスの社長を務めていた藤田(でん) さんが経営陣にいた頃のことだ。

「有名な社長さんの話が聞けるんだ、とワクワクしながら行った記憶があります。会場ではスーツ姿のおじさんたちが、お土産でもらったマスコットのキリンのぬいぐるみを持って帰っていく姿がシュールで(笑)。『総会って面白いな』と思って、それ以来ハマッてしまいました」

会場での楽しみは、思いのほか多い。社長のプレゼン、質疑応答での受け答え、株主構成、受付社員の対応、本社や会場の雰囲気。再開発で新しくなった都心のホテルから見える景色も、日常生活ではなかなか見ることのできないものだ。

「GMOインターネットグループの熊谷正寿代表など、世界で戦うトップ経営者のプレゼンは、本当に勉強になります。普段なら有料セミナーでしか聞けないようなお話を、株主であればタダで聞ける。

また、食品や外食など身近な会社の総会だけでなく、BtoB企業の総会も意外と面白いですよ。普段は何をしているかわからない会社でも、総会に行けば事業内容を丁寧に説明してもらえるので、企業の理解が深まります。いわば知的好奇心が満たされる『大人の社会見学』みたいなものだと思っています」とまる子さんは目を輝かせる。

「数字に表れない情報」が、投資判断の質を高める

総会の楽しみ方はわかったものの、個人投資家にとって総会に行く「投資上のメリット」はあるのだろうか。まる子さんは「数字に表れない情報を肌で感じられること」と話す。

「総会に行くと、決算短信や有価証券報告書には書かれていない『定性的な情報』が手に入ります。社長の人柄、社員の対応、株主構成、会場の空気。書類上の数字には表れない情報を、肌で感じられる場なんです。

そしてその肌感覚は、実際の投資判断にも直結します。例えば、社長が代替わりして何か不祥事があったときの対応を見て、あまりよく感じられなかったら『売り』を検討しますし、逆に受付の社員さんの対応が素晴らしくて、『この会社は社員教育がきちんと行き届いているな』と思えたら、『買い増し』する方向で考えます。本当にちょっとしたことなんですが、現地に行かないと絶対に見えないものです」

質疑応答の場も、社長の「素」がうかがえる瞬間だ。

「招集通知に書いてあることを淡々と進める前半よりも、後半の質疑応答こそ『ライブ』の本番。難しい質問が出たときに、社長自身が答えるのか、それとも壇上の担当役員に振るのか。場慣れした経営者は、そのハンドリングがうまいんですよね。不測の事態への対応力や、対話のスキルを学びたい人には、本当におすすめです」というのは、ビジネスパーソンにも役立つ情報だ。

ところで、決算が好調な会社の総会は和やかなムードで進むが、不祥事が起きた会社は緊張感が張り詰めているという。

「『良い業績をありがとうございます』で始まる総会と、『これはどうなっているんですか』で始まる総会では、空気がまるで違います。荒れた総会も、それはそれで面白い。年に一度のライブだからこそ、その温度感が体に伝わってくるんです」というのは、さすが年に数十回も総会に参加する玄人ならではの楽しみ方だ。

そんな株主総会だが、以前は株主総会の参加者に配られる「お土産」を目当ての投資家も多かった。入り口でお土産だけをもらって、すぐ次の総会へ「ハシゴ」するのだが、コロナ禍を挟んで、参加者層が大きく変わったという。

「コロナ禍をきっかけに総会がオンラインで開催されることが増え、今ではお土産自体がほとんどなくなりました。そうなったことで『お土産目当て』の投資家が減り、本当にその会社のことを知りたい、社長の話を聞きたいという方が集まるようになったんです。人数は減りましたが、落ち着いた雰囲気でじっくり話を聞けるようになったので、総会としての質はむしろ上がったと感じています」と、“お土産なし”の思いがけない効果を教えてくれた。

マクドナルド、ヒューリック……優待銘柄の「読み解き方」

優待銘柄選びにも、まる子さんならではの視点がある。たとえば、不動の人気を誇るマクドナルドの優待。

「マクドナルドの優待は、物価高にめっぽう強いんです。レストランで1000円だったランチが1500円に値上がりすれば、3000円の優待券で食べられる回数は3回から2回に減ってしまいますよね。でも、マクドナルドはバーガーなどの商品と引き換える方式なので、メニューの価格が上がっても影響はありません。むしろメニュー価格が上がるほど、優待券1枚あたりの実質的な価値が高まる構造で、とてもお得だなと思います。

そしてこうした優待銘柄は、その魅力もあって『絶対に売らない』という株主も大量にいるものです。そうすると株価も下がりにくくなります。裏を返せば、もし優待を廃止すれば株価は一気に半値近くまで下がる可能性もある。会社側もそれはわかっているので、廃止リスクも比較的小さいと言えるのではないでしょうか」と、まる子さんは堅実な意見を述べる。

近年のトレンドは、配当重視への揺り戻しと、デジタルギフトへの移行だ。輸送費の高騰で、現物優待を縮小する企業も増えているとまる子さんは話す。

「だからこそ、高配当と優待の両取りができる銘柄、例えばヒューリックのような『合わせ技』が評価されています。優待のスタイル自体も、紙のクオカードからデジタルギフトへとシフトしつつある。優待は廃止リスクも常にはらんでいるので、そのあたりを見極めながら、自分の生活で本当に使えるものを選ぶのがいちばんです」

「総会デビュー」は6月だけじゃない。初心者のためのミニガイド

3月決算企業が多い日本では、株主総会は6月に集中する。ただし、総会デビューのチャンスは6月だけではない。

「3月・6月・9月・12月決算企業の権利確定月の3カ月後に総会が開かれます。つまり6月の次は、9月決算企業の総会が12月に集中する。6月を逃しても、年に何度かタイミングは巡ってきます」と説明する。

開催時間は午前10時スタートが多く、規模にもよるが、おおむね11時から正午までには終了する。まる子さんは「大体2時間以内と思っておけば大丈夫」と話す。服装も普段着で問題なく、議決権行使書1枚で参加できる。事前に届く「招集通知」も持参しておくと、議事の確認や質問の準備がしやすい。

「招集通知には、議案だけでなく、お土産の有無や式次第まで丁寧に書かれていることが多いんです。事前に読み込めば、当日のイメージがかなりつかめますよ」

オンラインとリアルのハイブリッド開催が一般化したことで、選択肢も広がった。

「自宅ならパソコンで資料を大きく表示できるし、移動の手間もかからない。ただ、ライブに行くかライブビューイングを見るかと同じで、会場でしか味わえない空気感は確かにあります。まずは参加しやすいオンラインから入って雰囲気をつかむのもいいし、ライブの臨場感を体験しに会場へ行くのもいい。両方、試してみてほしいですね」とまる子さんは背中を押す。

まる子さんは「個人投資家は続けたもん勝ち」と話す。そのために“楽しむこと”が大事で、「私はたまたまその楽しみが優待と総会だっただけ」と笑う。

まずは気になる1社の総会へ、足を運んでみてはどうだろうか。会場で初めて見えてくる「会社の素顔」が、投資への向き合い方を変えてくれる。

【まる子さん厳選】生活者目線でおすすめの優待株5選

銘柄(コード) 優待の特徴
ヒューリック(3003) 駅前ビルを多数所有する不動産大手。300株以上を2年以上継続保有すると優待として6,000円相当のグルメカタログギフト(3,000円相当の商品を2点)を受け取れる。他にも受け取りのパターンあり。配当利回りも比較的高水準で、配当と優待の両取りができる人気銘柄。
ビックカメラ(3048) ビックカメラの全店舗で使える「株主様お買物優待券」が魅力。家電だけでなく、おもちゃや食品、酒類など店内の全商品で使える汎用性の高さに加え、比較的少額(100株以上)から取得できる定番の優待銘柄。
イオン
(8267)
100株以上の株主に発行される株主優待カード「オーナーズカード」を提示すると、買物金額の一部が後日キャッシュバックされる仕組み。半年に一度精算され、近くにイオン系列の店舗がある人なら日々の暮らしで効果を実感できる。
日本マクドナルドHD(2702) バーガー類・サイドメニュー・ドリンクを各1枚ずつ引き換えられる「株主ご優待券」(100株以上)。物価高で価格が上がっても、夜マックのパティが倍のメニューなどを1枚で引き換えられるため、メニュー価格が上がるほど実質的な価値が高まる。
セブン&アイ・HD(3382) 保有株100株以上からセブン&アイグループ共通で利用できる「共通商品券」を受け取れる(社会貢献活動団体への寄付を選択することも可能)。有効期限がないのが特徴。セブン-イレブンやイトーヨーカドーはもちろん、アカチャンホンポなど系列各社でも使えるため、用途の幅が非常に広い。
※2026年6月11日現在。まる子さんへの取材をもとに編集部作成。

(取材協力=まる子、構成=田中裕康)