※本稿は、井手隊長『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(ハヤカワ新書)の一部を再編集したものです。
なぜ「ラーメン二郎」は安くて量が多いのか
「ラーメン二郎」は自家製麺の店が多い。かつてテレビで「ラーメン二郎」のとあるお店が取材されていたが、「なぜ自家製麺なのか」と聞かれて、「自家製麺をすれば、たくさんの量を出せるからだ」と答えていたのが印象的だった。
オーションという強力粉を使っていて、ワシワシと物凄くコシのある麺で、濃厚な豚骨醤油スープにも負けないパワーがある。自家製麺でコストを抑えて作ることで、安く出すことができ、お腹いっぱい食べてほしいという思いが込められている。
早く食べないと麺が伸びてしまうので、ジロリアンの中では「天地返し」といって野菜の上に麺を避けて伸びないようにしながら食べるという裏技もある。カスタマイズができるので、それぞれの好みの量、味に調整して食べられるのも魅力だ。
ちなみに「二郎」では「ニンニク入れますか?」と聞かれたら、野菜の量、ニンニクの量、脂の量、味の濃さを指定するルールだ。「ニンニク入れますか?」「野菜マシ、ニンニク少し、アブラ、カラメで」という流れである。これを「コール」と呼ぶ。
二郎は替えのきかない唯一無二のラーメン
最近では、食べ切れないという人も多いので、麺少なめや麺の量をグラム単位で注文できるお店が出てくるなど、多様になってきている。「二郎」はラーメンではなく、あくまで「二郎」という食べ物、という人もいて、本当に唯一無二で替えのきかないラーメンなのである。
私がラーメンの食べ歩きを始めた2000年代初頭においては、二郎系のお店はそれほど多くなかったが、ここから一気に20年かけてお店が増えてきた印象がある。横浜家系ラーメンの資本系のお店が増えてきた時と違って、二郎系の初期のお店はどこもそれなりにクオリティが高かったことが大きいだろう。
加えて、見た目のフォルムを似せやすいということもあり、二郎系に飛びつくお店が多かったともいえる。ある程度のクオリティを保っていれば、どこも行列店になりやすく、お客さんも皆お腹いっぱいになるので、満足度も高くなる。
店の数が増え、明らかに飽和状態と思えたが、増えても増えてもお客さんが入るので、「二郎系」は無敵のコンテンツの一つではないかと感じている。

