1杯2000~3000円のラーメンが登場している。ラーメンライターの井手隊長さんは「1杯1000円を超えるのは高いという声があるが、全国的に見ればラーメンの価格はまだまだ安い。業界全体が高価格化しているというより、ラーメンの進化における二極化、三極化がスタートしたと捉えたほうがいい」という――。

※本稿は、井手隊長『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(ハヤカワ新書)の一部を再編集したものです。

醤油ラーメン
写真=iStock.com/w-stock
※写真はイメージです

ラーメンの価格は全国的に見ればまだ安い

ここ数年でラーメンが一気に高くなったという声はネットを見ていてもたくさん見かけるが、実は、全国平均をとってみると、ラーメンの平均価格はまだ665円(総務省統計局「小売物価統計調査(2024年1月)」より)なのである。高価格帯のラーメンはまだほんの一握りで、全国的に見ればまだまだ安いというのが現状なのだと思う。

2024年10月、「メルシー」が復活した時のラーメンの価格は600円。私が中学に入学してから31年間で250円値上がりしたことになるが、まだまだ安い。ヘタをするとコンビニのチルド麺よりも安い。

「メルシー」のメニュー表
31年間で250円値上がりしたが、まだまだ安い「メルシー」のラーメン(出所=『ラーメン一杯いくらが正解なのか』)

ラーメンの価格の問題は完全なる過渡期で、まさにカオス化している状況だ。本書でその歴史と現在と未来を見ていきたいと思う。ラーメンがまだまだ進化していくことは確信しているが、この価格の問題は進化を続けるための大きな課題であることは間違いない。

「1000円の壁」論争はいったいいつ頃に始まったものなのだろうか。もともと安いイメージだったラーメンだが、時代を経てだんだんと高価格帯のラーメン店が現れるようになり、800円台ぐらいまでは順調に進んできた。

通常のラーメンが800円台になると、トッピング付きのメニューが1000円を超えるようになってきて、「高い」という声が聞かれるようになってきた。

賛否が分かれた本田圭佑の投稿

そして、世界的なグルメガイドである『ミシュランガイド東京』にラーメン部門が新設された2014年あたりから、高級路線のラーメンが一気に増えてきて、「1000円の壁」問題が明確に浮上してきた。

誰でも気軽に食べられる大衆食であるラーメンが、大衆食でなくなってしまうのではないかという大きな不安が渦となって「1000円の壁」問題に発展しているのだ。

ラーメン業界内の課題として語られてきた「1000円の壁」問題だったが、これが一気に過熱して一般的にも話題となったのは、2023年1月に元サッカー日本代表の本田圭佑氏がTwitter(現X)に投稿したツイートがきっかけといえるだろう。

ラーメン屋。あの美味さで730円は安すぎる。もうちょっと値上げするべき。ってか色んな業界がもう少し値上げするべき。高すぎるか安すぎるかの両極になり過ぎ。次ラーメン食うときは2000円支払います。必ず。

このツイートが発端となり、ラーメンの適正価格についての論争が勃発し、本田氏のツイートに対しても賛成と反対の声で真っ二つに分かれたのが印象的だった。