優れたイノベーターであれば、こうしたプロセスを無意識に辿っています。しかし、多くの人はフレームを通して見ることに慣れているため、有意義な情報を見落としてしまうのです。
有効なソリューションを出すためには、観察力を磨きましょう。あらゆる角度から見て、考え続ける姿勢が重要です。
そうはいっても……という方は、まず次の5つの側面を観察してみてください。(1)身体的側面(体の動きにフィットしているか)、(2)頭脳的側面(わかりやすいか)、(3)時間的側面(時系列で見て問題はないか)、(4)環境的側面(物理的な環境に問題はないか)、(5)運用的側面(運用管理面で問題はないか)。
観察に熟練してくると、次第にこうした見方を意識しなくてすむようになります。1人で見知らぬ国を旅するときのように、身の回りのことを眺めてみてください。イノベーションのヒントがきっとあるはずです。
「行動観察力」チェックテスト
あなたは、IT系企業の企画マンです。次のイラストから、何を読み取り、どのようなアイデアを発想しますか。
【ヒント】カップルの女性の視線に注目しよう
ドアの前のカップルに注目しよう。女性のほうは彼氏と何か話をしながらも、目線はケータイのほうを向いている。表情を見ると、どうやらメークの具合をチェックしているようだ。女性はケータイをチェックするふりをしながら、つるつるの表面を鏡代わりに使っていたのである。ここから、彼氏に気づかれることなく顔の状態をチェックしたいという女性のニーズが読み取れる。
解答例:
(1)携帯電話のカメラが持ち主の顔を自動的に探し出し、その画像を定期的にチェックして、アイラインがにじんでいるなどの問題があればメールで教えてくれる機能。
(2)携帯電話の表面加工を女性が鏡として使えることを前提とした仕様にする。
1966年生まれ。神戸大学大学院工学研究科修了。米コーネル大学にて修士号、和歌山大学にて博士号(工学)を取得。2005年より行動観察ビジネスを開始。09年より現職。著書に『ビジネスマンのための「行動観察」入門』など。