神奈川県の聖光学院高校の東大合格者数は2024年100人、25年95人。特筆に値するのは開成や灘を超える現役合格率(両年とも37%台)。同校の校長・工藤誠一さんが、同じくめざましい合格実績を残している渋谷教育学園渋谷高校の校長・高際伊都子さんとの対談で「これからの社会で活躍する子に必要なもの」を語った――。(前編/全2回)
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
聖光×渋渋 進学実績が伸びる理由があった
――これからの社会で活躍するために、子供たちに必要な力を教えてください。
【工藤誠一:聖光学院中学校高等学校校長(以下、工藤)】「氷が解けたら何になる?」と子供に質問したとしますよね。ほとんどの子供は「水」と答えるでしょうし、まあ、それが正解でもありますよね。
【高際伊都子:渋谷教育学園渋谷中学高等学校校長(以下、高際)】ええ。AI(人工知能)にその質問をしても、「水」と答えるでしょうね。
【工藤】でも、「春になる」と答えた子供がいたとしたらどうですか?
【高際】すてきですね。
【工藤】でしょ? 私は、これからの時代はそういう独特の感性を持った子供を育てていかなければならないと思っています。かつての日本は、みんなが共通の答え「水」と答えることを是としてきた。
【高際】高度経済成長時代にはそれが望まれていたんですよね。
【工藤】自動車を1社で全部造ってきたから、同じ価値観の人間のほうが良かったんです。でも、それでは電気自動車は造れない。コンピュータやカメラの専門家と手を組まないとできません。iPhoneだって、写真やテレビやいろんな技術を集めて作っている。それぞれ異なる背景を持つ人たちがチームを組んで新しくイノベーションを起こしていく時代です。だから、特徴ある発想、違いがあるってことが大事になる。
【高際】ますます変化が激しくなるとが予想されます。
【工藤】そう。みんな同じ答えでは創造性が広がらず、世界から取り残されます。一人一人の個性を認め、特徴あるものとして生かしていく、例外をつくっていく。多様性に満ちた子たちを認めていくことが教育にも子育てにも大事だと思います。

