「八王子きぬた歯科」は、インターネット広告全盛の時代に、首都圏中心に270カ所もの巨大看板広告を設置し、年商18億円を叩き出す。見る者に強烈なインパクトを与える、その独自の看板戦略はいかにして編み出されたのか。院長のきぬた泰和さんと、元日本マイクロソフト業務執行役員の澤円さんとの対談をお届けする――。

※本稿は、マイナビ健康経営のYouTubeチャンネル「Bring.」の動画「なぜこの男は、“日本一顔が割れた歯科医”となったのか。異様さと、うさん臭さで他を圧倒した、常識を打ち破る看板戦略のすべて」の内容を抜粋し、再編集したものです。

きぬた歯科の看板 杉並区梅里の青梅街道沿い(阿佐ヶ谷駅の南東)
きぬた歯科の看板 杉並区梅里の青梅街道沿い(阿佐ヶ谷駅の南東)(写真=Asanagi/CC-Zero/Wikimedia Commons

看板を見た人とネット広告を見て来た人の数が同じだった

【澤円】きぬた歯科といえば、やはり看板広告で多くの人に知られていますよね。実は、わたしはきぬた歯科の巨大看板広告が複数立っているエリアに住んでいて、車から見かけない日はないほどです。インターネット広告が全盛期を迎えるなかで、なぜ看板広告なのでしょう?

【きぬた泰和】きぬた歯科の主戦力はインプラントですが、開業したての頃には「SEO(検索エンジン最適化)」対策も積極的に行っていました。インプラントというキーワードで検索すると、検索結果の1ページ目に表示されるように、年間約1200万円もかけていたのです。

ですが、2年ほど続けていても、患者さんはあまり増えませんでした。当時も、世間ではネット広告の効果が騒がれていましたが、体感的には疑問がずっと残っていました。

その後、2012年にインプラントに対するネガティブなテレビ報道があり、それがきっかけで売上が激減……。そこで、なんらかの対策をしなければとなり、患者さんの来院アンケートを見返していたところ、ネット広告を見て来た患者さんと看板広告を見て来た患者さんの数がほぼ同じであることに気づいたのです。

当時、看板広告は3つほど出していて、年間75万円のコストをかけていました。一方、ネット広告は約1200万円です。その事実を発見し愕然としましたね。

【澤円】なるほど。実際に両者を比較して、ROI(投資利益率)を検証し、看板広告がベストという結論になったわけですね。

【きぬた泰和】他にも、タウン誌や職業別タウンページなど、いろいろな広告を試していましたが、それぞれやはり限定的な効果でした。そこで、2012年から看板広告を本格的にスタートしたという流れです。