摩擦から生まれるイノベーション
プロジェクトはようやく、製品開発や市場調査を終え、ガーナ政府やNGOなどとの連携体制を確立したところ。
「まだ総論を詰めている段階なので、コミュニケーション上の壁といって思いつくのは、仕事を進めるスピード感が、ゆったりした『ガーナ時間』ということくらいでしょうか」と中尾氏は笑顔を見せる。
しかし11年度からは、プロトタイプ製品を使った効果確認試験やテスト販売、本格生産・販売に向けた準備に取り組む予定だ。「生産や販売について具体的な話を進めるにつれ、意思決定の過程などでもっと摩擦が起きてくると思いますね」というが、こうした摩擦は、一概に悪いこととはいえない。オープンイノベーションの源ともなるはずだ。
本格的な事業化は、12年度以降になる予定だ。社会貢献としてやるだけでは一部の子どもたちしか助けられないが、ビジネスとして成り立てば、他国への横展開の可能性も生まれ、より多くの子どもたちを救うことができる。中尾氏は「小さくても、とにかくビジネスとしての成功事例をつくりたい」と意欲を見せている。
※すべて雑誌掲載当時
(尾関裕士=撮影 味の素=写真提供)