プロジェクトを進めるうえでの壁は、国の違いよりも、NGOと企業の文化の違いによるものだったという。
「そもそも十数年前まで、一般的にNGOは企業に懐疑的な目を向けており、企業と組むなんて考えられなかったと思います」と中尾氏は言う。
両者のコラボレーションが活発化し始めたのは、まだ最近のこと。「小さな成功事例を積み重ねていくしかない」と中尾氏は語る。両者の文化の違いを象徴するのが、「言葉」だ。同じ言葉でも、企業とNGOでは違った意味で捉えていることがあった。
「たとえば、こちらは『調査』という認識で進めていたことを、NGO側ではすでに『パイロットプロジェクト』の段階だと認識していたことがありました」
こういった誤解は、ひとつひとつ丁寧に解決していくしかない。どちらが正しい、優れているということではなく、互いの違いを認識したうえで対話を重ねるしかないのだ。
すれ違いがあっても、「『ガーナの乳幼児の栄養状態を改善する』という大義をきちんと共有していれば大丈夫」だと中尾氏は言い切る。各論で壁にぶつかっても、大義に立ち戻って一緒に考えれば、必ず解決策は見つかる。